この人、誰?

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この人、誰?

 月曜1限の語学クラス。休みボケした頭にはけっこうきつい。私は駆け足で大学の正門を通過した。  滑り込みセーフ。と思ったら、時計を見るとまだ5分の余裕がある。あれ、そうか。走って損しちゃった。 「真美、こっちこっち」  恭介が手を振る。恭介とは小学校の同級生で、中学・高校は分かれたものの、大学の語学クラスで再会した。お互い顔を合わせたときは、「おわっ」「えーっ」と叫びあい、それ以来、教室では一緒に座る。でも別に、特別な関係というわけではない。ジャングルジムで鬼ごっこをしていた小学生の頃の感覚のままだ。  桜が散って、柳の若葉が気持ちよく風に揺れる季節。私は鞄から教科書を取り出した。クラスメートたちは、すっかり私と恭介の仲を勘違いして、いつも隣の席を空けてくれている。誤解を解くのも面倒だから、そのままにしてある。  再び恭介が片手を上げて、入り口の方に手を振った。 「よお、涼。遅かったな」  涼? そんな人、このクラスにいたっけ?  顔を上げると、すらりとした男子が笑顔でこちらに歩いてくる。私は息をのんだ。ものすごいイケメン。こんな人、このクラスにいた? いや、断じていない。いたら目につかないはずがない。  驚いたことに、涼と呼ばれたその男子は、恭介の隣に座った。恭介を挟んで私とそのイケメン3人が並んだ形になる。そういえば、今日は恭介は窓際の2人席でなくて、真ん中の4人席に座っていた。まるで彼が来るのを予期していたかのように。  キツネにつままれたような心地になりながら、私はひそっと恭介に耳打ちした。 「誰?」  恭介はきょとんとしている。 「は、真美、何言ってるの。涼じゃないか、昔よくジャングルジムで一緒に遊んだ」  涼は柔らかい口調で私に声をかける。 「真美、おはよう。今日は早いじゃない」  え、この人、誰?
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