校庭のジャングルジム

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 ひとり取り残されて、ジャングルジムを見上げる。いつしか、鉄の棒に手をかけていた。もう、中を潜り抜けることはできない。表側を伝って、私はてっぺんまで登った。  慎重に両手でつかまりながら、空を見上げる。吸い込まれそうだ。あれ、何かに似ている。  風が心地よい。  ふと気配を感じて見下ろし、私は心臓が飛び出しそうになる。  涼。静かに、私を見上げている。いつからそこにいたんだろう。  お互いに沈黙したまま、見つめあった。涼は無表情だが、これまでのわざとらしい棘はなく、何か訴えるような目をしている。これだ。さっきの空の色。それに似ている。涼は何かを言おうとするように一度口を開き、またつぐんだ。それから、意を決したように、 「飛び降りろよ、真美。いつかのように。また、受け止めるから」  知らず知らず、私はつかまっていた鉄棒から手を離しそうになった。でもはっとして思いとどまる。  いつかのように?  てっぺんから見下ろす涼は、一面に咲くたんぽぽの中に、浮き上がっているみたいに見える。  あ、どこかで、こういう光景を見たことがある。
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