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真相
私は慎重にジャングルジムを降りた。涼が最後に私に手を貸した。私はその手をとって、たんぽぽの地面の上に、すとんと飛び降りる。
「私、ジャングルジムから、落ちたんだね」
つぶやくように言った。涼は、軽く首を振り、答える。
「そうだけど、そうじゃない。この世界では、僕が落ちたことになっている」
「この世界……って」
「君も薄々は感じていたんだろう、そう、ここは僕たちがいた世界とは別の世界なんだ」
私は目を瞠る。
「僕もかつては向こうの世界の住人だった。でも、衝撃で、こちらの世界に弾きとばされてしまった」
「向こうの世界って……」
「君が、つい最近までいた世界だよ。本当は君は、この世界の住人じゃない」
いないはずの涼がいるこの世界、本当は、いないはずなのは、私?
「どうして」
「どうしてかな。神様のいたずらか、あるいは、僕の願いを聞き届けてくれたのか」
少し茶目っ気のある目つきで涼が言った。
「君が大学の正門を走りながら通過した、あの時だよ。僕はたまたま見てたんだ。もう会えないと思っていた君が、成長した君が、急にこちらの世界にとびこんでくるのを」
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