13人が本棚に入れています
本棚に追加
「え、どういうこと。もう少し、分かるように言って。お願い」
私は懇願した。涼はそばの木製のベンチに私をうながす。たんぽぽはどこまでも黄色い花を咲かせている。
「僕はね、心臓が弱くて、皆と校庭で遊ぶことができない子供だったんだ。いつも、休み時間はこのベンチ、正確には向こうの世界のベンチだけど、ここに座って、皆が遊ぶのを見てた」
「そんなの、知らなかった。ていうか、私、まだあなたのことが思い出せないの」
おずおずと打ち明ける。
「思い出せないのは当然なんだよ。向こうの世界の僕は、僕がこちらの世界に来た瞬間に、消滅してしまったんだから」
「そんな」
「まあ、ゆっくり話を聞いてよ。それでね、小学生の頃の僕は、自然と、目の前のジャングルジムで遊ぶクラスメートたちに目がいくようになっていた」
「私や、恭介のこと?」
涼は前を見たままうなずいた。
最初のコメントを投稿しよう!