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「中でも、人一倍元気のいい女の子がいた。すばしこくて、右に左に、上に下に逃げ回って、決して鬼に捕まらない。それどころか、てっぺんを手離しで走ったりとか……僕には、信じられなかったなぁ」
涼はうつむいて、くすくすと笑った。
「いつしか、その女の子だけを目で追ってた」
目元がじんとしてきた。知らなかった話、でも、どこかで知っていたような話。
「でもね、その子は無茶しすぎる子だったんだ。あるとき、てっぺんを逃げようとして、足を踏み外し……」
思い出した。あの感覚。停止したジェットコースターで感じた、恍惚とした落ちるという感覚。あれは、初めてではなかった。
「僕は考える間なんてなかったよ。足が先に動いて、宙から降ってくる彼女を受け止めた」
「もしかして、その衝撃で?」
「そう、気がついたら、僕はこちらの世界にいた。こちらでは、僕がジャングルジムから落ちたことになっていた。そして、彼女は、こちらの世界にはいなかったんだ」
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