真相

3/4
前へ
/16ページ
次へ
「中でも、人一倍元気のいい女の子がいた。すばしこくて、右に左に、上に下に逃げ回って、決して鬼に捕まらない。それどころか、てっぺんを手離しで走ったりとか……僕には、信じられなかったなぁ」  涼はうつむいて、くすくすと笑った。 「いつしか、その女の子だけを目で追ってた」  目元がじんとしてきた。知らなかった話、でも、どこかで知っていたような話。 「でもね、その子は無茶しすぎる子だったんだ。あるとき、てっぺんを逃げようとして、足を踏み外し……」  思い出した。あの感覚。停止したジェットコースターで感じた、恍惚とした落ちるという感覚。あれは、初めてではなかった。 「僕は考える間なんてなかったよ。足が先に動いて、宙から降ってくる彼女を受け止めた」 「もしかして、その衝撃で?」 「そう、気がついたら、僕はこちらの世界にいた。こちらでは、僕がジャングルジムから落ちたことになっていた。そして、彼女は、こちらの世界にはいなかったんだ」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加