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遊園地
気が進まないながら、3人で遊園地へ来た。園内は親子連れやカップルでにぎやか。恭介ははしゃいでいる。
「よーし、来たからにはジェットコースターに乗るっきゃないな」
気合十分だ。ところが涼は遠慮がちに言った。
「あの、僕ね、心臓が弱いから、それはパス」
そうなのか。私もパスしたかったが、恭介があまりに浮かれているので、何となく断りにくい。
「僕は下で見てるから、2人で乗りなよ。メリーゴウランドや観覧車なら、僕も一緒に乗れるから」
仕方なく、涼を残して私たちはジェットコースター乗り場に向かった。2人並んで座って、見下ろすと、想像以上に高い。涼が手を振っている。
走り出した。無意識にひゃーと悲鳴を上げた。こんなに怖かったっけ? 隣の恭介を見やる余裕もない。
と、急にきしむような音と軽い衝撃があって、何とジェットコースターが停止してしまった。恭介と目と目を見かわす。
「何、これ?」
「故障、かな」
恭介も心持ち青ざめている。
まもなく放送が入った。
『ただ今、ジェットコースターの走行に何らかの異常が検知されました。ご心配は要りませんので、ご乗車の皆さんは、落ち着いてお待ちください』
落ち着いてなどいられない。私たちは、一番高いところにいるのだ。
急に体が冷えた。高所の風のせいばかりではない。
「大丈夫だよ、真美、昔から高いところが好きだったじゃないか。ジャングルジムのてっぺんも、平気で立って歩いてた」
無理に笑顔をつくった恭介が励ますように言う。でも、私の恐怖心は半端なかった。叫び出したいのをこらえながら、身を固くしていると、声が聞こえた。
「真美、飛び降りろよ」
耳を疑ってそっと下を見ると、涼がまっすぐこちらを見上げているのが分かった。そして、また声が聞こえた。
「いつかのように……」
え? 先が聞き取れない。私は目を固くつぶった。
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