遊園地

1/3
前へ
/16ページ
次へ

遊園地

 気が進まないながら、3人で遊園地へ来た。園内は親子連れやカップルでにぎやか。恭介ははしゃいでいる。 「よーし、来たからにはジェットコースターに乗るっきゃないな」  気合十分だ。ところが涼は遠慮がちに言った。 「あの、僕ね、心臓が弱いから、それはパス」  そうなのか。私もパスしたかったが、恭介があまりに浮かれているので、何となく断りにくい。 「僕は下で見てるから、2人で乗りなよ。メリーゴウランドや観覧車なら、僕も一緒に乗れるから」  仕方なく、涼を残して私たちはジェットコースター乗り場に向かった。2人並んで座って、見下ろすと、想像以上に高い。涼が手を振っている。  走り出した。無意識にひゃーと悲鳴を上げた。こんなに怖かったっけ? 隣の恭介を見やる余裕もない。  と、急にきしむような音と軽い衝撃があって、何とジェットコースターが停止してしまった。恭介と目と目を見かわす。 「何、これ?」 「故障、かな」  恭介も心持ち青ざめている。  まもなく放送が入った。 『ただ今、ジェットコースターの走行に何らかの異常が検知されました。ご心配は要りませんので、ご乗車の皆さんは、落ち着いてお待ちください』  落ち着いてなどいられない。私たちは、一番高いところにいるのだ。  急に体が冷えた。高所の風のせいばかりではない。 「大丈夫だよ、真美、昔から高いところが好きだったじゃないか。ジャングルジムのてっぺんも、平気で立って歩いてた」  無理に笑顔をつくった恭介が励ますように言う。でも、私の恐怖心は半端なかった。叫び出したいのをこらえながら、身を固くしていると、声が聞こえた。 「真美、飛び降りろよ」  耳を疑ってそっと下を見ると、涼がまっすぐこちらを見上げているのが分かった。そして、また声が聞こえた。 「いつかのように……」  え? 先が聞き取れない。私は目を固くつぶった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加