母親(63)

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母親(63)

「もしかしてさっちゃん?」 「……その声はゆりちゃん?」 「そうそう、ゆりこゆりこ!」 「うわ~久しぶり~」 「あんたも早かったねえ。私を追ってきたん(笑)?」 「追うかいな。病気の発見が遅くってな。平均寿命まで生きられへんかったわ」 「定期健診サボってたんとちゃうの?」 「どうせ老いたら治療は寝たきりや。こっちの方が良かったのかもしれん。家族にも世話かけるしな」 「家族なあ。るりこ、寂しかったやろなあ」 「るりこて、ゆりの次女ちゃんやんな?」 「そう。もう結婚してお母さんやで」 「あ、こっから見えるん?」 「見える見える。ちゃんと天から見守ってやらんとな」 「そや。長女ちゃんには逢ったん? えりこちゃんやっけ?」 「そう、えりこ。えりこは、私が来た時にはもうあっちに戻ったんやって」 「そうか。でも良かったやん。また人間やってるんやね」 「あの黒い屋根の家の女の子。もう5歳くらいかな。ええ家庭に生まれたみたいで安心やわ」 「あたしがゆりと出逢ったんも、あれくらいの時やったな」 「あーそやっけねえ」 「学生時代、学校楽しかったんはゆりがおったからやで」 「なに、急に?」 「ありがとうな、友達になってくれて」 「またあっちに行っても逢えるとええな」
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