あう

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 一目惚れだった。  いつもの時間、いつもの電車、いつもの顔ぶれ、のはずだった。通勤通学に使われるこの電車もこの時間のこの駅ではさすがに人数も少なくて顔ぶれも平日はほとんど変わらないから全員が顔見知りくらいの感覚になる。  それなのにその日乗ってきた初めて見る顔に私は一目惚れしてしまった。普段は本を読んで過ごすのに私が降りる駅につくまで何度もその人の顔を盗み見てしまって本の内容は全然頭に入らなかった。もちろん話しかけることもなく電車を降りて、そのまま学校に行った。  次の日、その次の日も私は同じ時間に電車に乗った。いつもと同じ時間に、いつもの電車、いつもの車両、あのときと同じように。けれどその人は現れなかった。確かにこんな時期に環境が変わるなんて中途半端だから、きっとあの人はその日だけ用事があってこの電車に乗ったのだろう。わかっている、わかっているけれど、私の頭からあの人のことが離れない。諦められない、あなたに会いたいという気持ちが消えない。もう一度、会いたい。そのときは勇気を出して話しかける。きっとあの人に惚れる人なんていっぱいいるけれど、だからうんざりするほど言われているのかもしれないけれど。それでも私はこの気持ちを伝えたい。
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