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チャーリーの告白
いやなにね、正直なところ、おいらにもロベルトの恋心というものが、わからないわけじゃないんだ。ほんとだぜ。幼い頃、ロベルトはサリーヌにいのちを救ってもらったことがあるらしいんだ。空からやってきた大きな鷹にさ、喰われそうになったところをぴょんぴょんと跳ねてきたサリーヌが追い払ってくれたとかくれなかったとか。
ほら、ロベルトは純情だからさ、それを運命の出会いだと思い込んでしまったんだな、これが。
勘違い? そうかもしんないけどさ、愛は自由だ、誰を好きになろうと、それは本人の問題だろ?
ずっとおいらもそうおもって、ロベルトに忠告しなかったんだ。今から思えば、口を酸っぱくして、いや、おいらのからだでロベルトの口を塞いでやりゃよかったんだけどな、それも後の祭りというもんさ。
「な、いいかげん、別の相手を見つけろよ。それにサリーヌにはもう夫がいるんだぜ。なのにいつもつきまとっていちゃ、迷惑この上ないだろ? っていうか、ほんと踏み潰されてしまうぞ!」
おいらは何度も何度もそう言い聴かせてやったのに、決まってロベルトはこう答えたもんさ。
『……サリーヌの姿を見ると、いつも風を感じるんだ。とっても爽やかな風なんだ。その瞬間、ぼくの滑った肌がササッと波打つんだよ』
「いや、肌といってもおいらたちにあるのは、ただの鱗だぜ」
『まあ、表現に正確さを求めるとすれば、その鱗がキュキュキューンと鳴るんだよ』
「一体、それのどこが正確なんだよ? 音なんてするわけないだろ?」
『ものごとになんの意味性を見いだせないチャーリーには、たとえ死んでもわかりっこないさ』
なんてね、しまいにはこっちがおかしいみたいにロベルトは決めつけるのさ。
ほんと参ったよ、あの強情さというか、思い込みの激しさにはね。
それにしてもサリーヌもサリーヌだよ、とっととロベルトに、『顔も見たくはない!』と捨て台詞の一つや二つ、吐いてやればいいのに。
それにだよ、サリーヌは意外とおっちょこちょいでさ、自分の赤ちゃんをお腹のポケットから落っこちさせるなんて考えられないぜ。ったく、ま、ロベルトがサリーヌの赤ちゃんを捜してやろうと邁進してるから、こっちもついつい見捨ててはおけなくてさ。おいらもロベルトのあとを追っていったのさ、そして、ついに見つけたよ、カンガルーの赤ちゃんを! サリーヌの赤ちゃんを!
ところがさ、それからが大変。やつらは、おいらたちがサリーヌの赤ちゃんをさらった極悪人とばかりに、大きな眼をカッと見開いてこちらを一斉に睨みやがったんだ……
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