2日目

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2日目

「今日は何時に帰る?」 「ごめん、今日も遅くなる」  大介は梓の顔も見ずに出掛けてしまった。今日も女と会うのか。ならばこちらもーー。  昨日の失敗繰り返すまじ、と梓は荷物を確認した。エアコンのリモコンも壁のケースに収納した。手に持ったスマホを確認しポケットにしまった。これで今夜は絶対に撮影できる。  そして梓は臨戦態勢で車に乗り込んだ。  夕刻、大介は定時に会社を出た。追跡開始だ。大介は再び昨日と同じコンビニに寄った。梓も数台離れて車を停める。しばらくすると女性が大介の車に近寄り助手席に乗り込んだ。  車は夕べと同じルートを辿りインター付近のホテルへと滑り込んだ。昨日はただただ悔しくてホテルを睨むのが精一杯だった。でも今日は少しだけ余裕が出てきていた。  ただ待っているだけではダメだと思った梓は、スマホを取り出し「夫の浮気」と検索をかけた。出てくる出てくる、たくさんの体験談が画面から溢れてきた。 『急に優しくなってプレゼントを買ってきた』  大介は優しくなんてなっていない。プレゼントも貰っていない。 『ワイシャツに口紅が付いていた』  ポケットに口紅は入っていたけどワイシャツに口紅は付いていなかった。 『生活費を入れなくなった』  お小遣い制なので大介の給料を梓は把握している。給料振込口座のカードも通帳も梓が持っている。  どれも当てはまらなかった。もしかしたら大介は浮気なんてしていないのかも、ふとそんな思いがよぎった。  しかしそんなわけがない。女とホテルに入る所を目撃している。これ以上確かな証拠はない。  でも中で何をしているのかは分からない。もしかしたら商談かもしれない。会議かもしれない。  いやあり得ない。人から誤解されるような場所て仕事をするわけがない。絶対に浮気だ。梓は思い直した。 (でも、私の思い過ごしだったらいいのにな……)  ほんの僅かな希望を抱き、ホテルの監視を続けた。  浮気体験談に夢中になっていると車のライトが目に入った。反射的に目をつむり、そっと目を開けた。ライトの正体は大介の車だった。  今日こそ証拠を、と梓は大介の車にスマホを向けた。 「あれ?」  画面が暗い。電池切れだ。
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