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3日目
朝起きると既に大介は出かけた後だった。行ってしまったものは仕方がない。洗濯をしようと梓は洗濯カゴを持った。
「あ……」
大介の着ていたワイシャツに赤いシミがあった。
『ワイシャツに口紅が……』
昨夜の浮気体験談が頭に浮かんできた。これで一縷の望みも絶たれた。浮気確定だ。
(どうすればワイシャツに口紅なんて付くのだろう。服を脱ぐのも待ちきれず熱い抱擁を……)
想像すると一気に不愉快になった。洗濯機にワイシャツを放り込み漂白剤を一本丸ごと注ぎ込んだ。漂白除菌しなければ気がすまなかった。
(今日こそ証拠を撮ってやる。そしてその写真を突きつけて、たくさん慰謝料をもらって離婚してやる!)
居ても立っても居られず家中掃除をした。女の匂いがしそうで大介のシーツも枕カバーも全部洗濯した。枕も干した。
何で浮気なんかしたのだろう。自分に不満があったのだろうか。こんなに一生懸命やってるのに。こんなに愛してるのに。梓は悔しくてたまらなかった。
夕方、梓は今日も大介の車を追った。車は再びホテルへと入っていった。いくらなんでも連日ホテルなんてどうかしていると思う。相手はそんなに魅力的な女性なのだろうか。
深夜大介の車がホテルから出てきた。女の顔を確かめたくてライトを点けスマホを向けた。今日は充電器を持参しているので電池は十分だ。
大介の車が梓の車の前を通り過ぎる。シャッターチャンスだ。梓は撮影ボタンを押した。
「あれ……?」
違和感があった。梓は撮影した写真をすぐさま確認した。そこには大介だけが写っていた。女はどうしたのだろう。女だけホテルに泊まるのだろうか。
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