双璧

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 酒場にて。耳を澄ませて、神経を集中させて。  決して姿は見ないようにして彼の言動を収集する。    ざわめきの中でたった一人の動きを感じ、声を拾い上げるのは難儀だが、私にとってこのは上なく楽しい時間だった。  そんな風に思えるようになったのは、かれこれ何年前だろうか。この酒場、この席で、同じように背後に意識を向け続けたが、あの日彼は姿を見せなかった。
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