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彼らの言う通り、サマル将軍の配下であるレスリー隊長は人格者だ。……おそらく。
毎朝、王への謁見で同席するくらいしか接点がなく、言い切ることはできないのだが、威風堂々たる彼はとても目を引く。
間柄が間柄なものだから、もちろん、話すことはおろか、見ることも叶わない。苦手な酒場に足を運び、耳を澄ませて、神経を集中させて、決して姿は見ないようにして彼の言動を収集するしかなかった。
口数が多い方ではないようだが、時折朗らかな笑い声を立てることがある。どんな顔をしているのか、振り向きたくなるのをぐっとこらえるのは一苦労だ。
きっと、気持のよいやつに違いない。勝手な想像に過ぎないが、そう思うと苦しくて仕方ない。我々は本来、いがみ合う間柄ではないのだから。
酒場からの帰り道は、聞き耳を立てて得た情報を思い出しながらと決まっている。新鮮なうちに記憶しておくんだ。忘れないように、何度も何度も——。
彼は私の一番の関心事だ。彼の姿を目の端で捉えながら思う。
いつか、お会いたい。話してみたい。
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