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凌太の大きな手のひらに、自分のそれを絡ませる。
冷たくなった指先に、凌太の頼もしい温もりが伝わってくる。
「時間もあるし、このまま歩いて帰ろっか」
家までは駅二つ分。歩けない距離じゃない。
「途中、スタボ寄ってみる?」
凌太の言葉に、私は大きく頷いみせる。
「いいね」
スタボは通りの先にある去年オープンしたばかりのカフェだ。
でも塾が毎日ある私達はまだ行けていない。
ひんやりとした風が伸び気味の前髪を揺らすと、凌太の切れ長の目が露わになる。
いつも優しい輝きを湛えている二つの瞳。
「その……。いつになったらポケットに入ってるヤツ渡してくれるの?」
えっ……。
私は思わず左ポケットの中でお守りを握りしめた。
きっと美春だ……。
さすがに直接凌太に言ったりはしないだろうけど、千里ちゃん辺りに喋ったのが巡り巡って、という感じなんだろう。
握りしめた手のひらを通じて、再び黒い思いがじわじわと湧き上がってくるような気がした。
「……無理!」
「えっ? 何で?」
凌太の目が驚いたように見開かれる。
「何でも!」
こんなもの渡せる訳がない。
「だって俺の為に作ってくれたんじゃないの?」
「そうだけど……」
だってこれには黒々とした私の怨念が込められているのだから……。
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