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神社の前で考えていることは、神様に全部聞かれちゃっているのかな……。
「……とにかく、これは渡せない」
凌太の目が鋭く細められる。
繋いでいた手はいつの間にかほどかれていて、凌太の大きなそれは不機嫌そうにデニムのポケットに突っ込まれている。
「……何で?」
黒い眉がぎゅっと真ん中に寄せられる。
「何でも!」
何でなんだろう……。
喧嘩なんてしたくないのに……。
茶色い落ち葉が、乾いた土の上をカラカラと音を立てて転がっていく。
凌太の視線が、それを追いかけるように地面に向けられる。
通りを走る車と乾いた風の音。
薄い唇の間から吐き出される振動が、微かに耳に届く。
ふーっ……。
胸の奥がドクリと波立った。
凌太……今……ため息ついた?
「……先、スタボ行ってて……」
「えっ……」
続いて呟くように告げられたセリフに、私は冷凍庫の中にぽんと放り込まれでもしたような気分になった。
私は別にカフェに行きたい訳じゃない。凌太と歩きたいだけなのに……。
私が歩きながら頭を冷やせば、凌太はちゃんとスタボに来てくれるのかな……。
新年早々、私は何をやっているんだろう。
性悪なことばかり考えているから、バチが当たったのかもしれない……。
「……わかった……」
仕方なく私は車の行き交う通りの方へ向きを変える。
私が重い足を踏み出したその時だった……。
「痛……」
背後から聞こえてきたその声に振り返ると、凌太は左の踵を押さえてしゃがみ込んでいた。
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