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天色に輝く空はどこまでも高かった。
考えても考えても、思考は一つの答えにまとまることなく、その青い空に吸い込まれ、霧散していってしまう。
隣を気怠げに歩く親友の様子を窺うように、私は視線を向けた。
「手作りのお守りとかって、重いかな……」
「えー、いんじゃん?」
ローファーの先で小石を蹴飛ばしながら美春は気のない声を上げる。
「もー、こっちは真剣に訊いてんのに」
私の言葉に、彼女はふーっと大きく息を吐いてみせてから私に向き直る。
「絵梨、お花畑……」
「えっ……」
ブラウンの瞳はこちらを睨むように向けられている。
「この追い込みの時期に何呑気なこと言ってんの? 友達じゃなかったら蹴り入れるとこだけど?」
美春はファイティングポーズをとると、蹴り上げる真似をしてみせた。
「……ごめん」
「絵梨は余裕かもしんないけど、みんな必死なんだよ」
そう、ウチの生徒の多くは国立か東京の難関私大を受験する。
その中でも私はなんとか上位をキープしてきたけれど……。
でも、私だって余裕な訳じゃない……。
私の志望校は地元の国立大。
中学の時からそれを目指して頑張ってきた。
ウチは弟もいるから、浪人はできない、一人暮らしのお金は出せない、と親に言われてきた。
でも、奨学金を貰えば東京の私大にだって……とか、この期に及んでふらふらと気持ちが揺れ動いているのだ。
どうもモチベが上がらない。
それはこのお守りにも関係していて……。
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