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1.目覚め
僕は意識が朦朧としていた。
ここが夢の中なのか現実の中なのか、僕には全く区別がつかなかった。
どこかで見たことがあるような景色が浮かんでは消えた。
僕はそのうちの一つに手を伸ばしたが、その景色は歪んで姿を消した。
僕は一体何を掴もうとしたのだろうか。
そんな疑問が脳裏を過ったが、生憎それ以上のことは考えられなかった。
そうこうしているうちに、前方から得体の知れない強烈な光が現れた。
僕は反射的に目を背けた。
強烈な光が瞬く間に全身を包んだ。
「・・・ねぇ?聞いてる?」
どこかで聞いたことがあるような声だ。
意識が次第にはっきりしてきた。
「あなた、ここは初めてよね?」
何だろう。僕に何か尋ねているようだ。
しかし、何を聞かれているのか分からない。
頭がまだぼーっとしている。
しばらくすると視界が少し定まってきたようだった。
傍に女性が立っている。
この女性が僕に話しかけているのだろうか。
僕は女性に焦点を合わせた。
「え?」何とかふりしぼった声が掠れて音になる。
「だからー。あなた、ここは初めてよね?」
女性の声には苛立ちが少し含まれていた。
僕は一体何と答えたらよいのか。・・・というより、そもそも質問の意味がわからない。
やがて霧の中から姿を現すように女性の姿がくっきりと現れた。
女性はピンクのパンダ柄のパジャマを着ている。
そして、おさげ髪に赤縁のメガネをかけている。
左側の眉毛の上に、ほくろがあった。
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