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身長は僕より高い。
と思ったが、どうやらこれは勘違いのようだ。
女性の視線は僕に向けてかなり下げられている。
状況から言えば、女性は立っていて、僕はどうやら椅子に座っているようだった。
ゆっくり視線を下げると、椅子に座って、やはりパジャマを着た僕自身の足が見えた。
ふと見ると、僕の右腕からチューブが延びていた。
そのチューブの先には、大きなパックがあった。
これは、点滴?
僕は椅子に座りながら点滴を受けているようだった。
「どうなの?」
女性はさらに僕に詰め寄った。
状況がよく分からない。
点滴にしても、この女性にしても。
「あの」僕はまた掠れた声を出した。
「ふん、返事は一応出来るのね」女性は鼻を鳴らすと、おもむろに腕を組んだ。
「まぁいいわ。たぶんあなたはここは初めてね」
女性は何だか分からないことを言って勝手に納得したようだった。
「ここって?」僕は女性に聞いた。
「あなたそんなことも覚えてないの?」女性は僕に呆れたようだった。
しかし、女性がいくら僕に呆れようが、状況が飲み込めないことには変わらない。
だったら、素直に聞くしかない。
僕はもう一度女性に聞いてみた。
「ここってどこですか?」そう言うや否や、女性の背後を白衣を着た長身の男性が横切った。
女性は僕の視線に気が付いたようだった。
「そうよ。ここは・・・病院」女性は僕の腕から延びたチューブに視線を向けた。
何となくは分かっていたが、この点滴を見ればここが病院であることは明白だった。
「やっぱり」僕はたった一つだけ分かったことが、あまり良い事実ではなかったことに落胆した。
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