スピルオーバー

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 「地球ではパンデミックでパニックが起きるでしょう、それを鎮圧する名目で武力を使うつもりだったんです」  連合の加盟惑星からテロが起きたのを知って、彼女は胸を痛めていた。  「ああ、一般の地球人は我々を危険な侵略者として認識したに違いありません、誤解を解くには時間がかかると思います。もっと素晴らしい出会いがあったというのに……」  「いや、私は地球人がそんな愚かでないと信じたい。我々はお互いを認めて握手できたじゃないか! きっと本来の君の姿を世間にしらせる事ができる日が来るにちがいない!」  「そうなる日が訪れるのを祈っています。それではまた逢う日まで、さようなら!」  そう言って、彼女は自分が乗ってきた宇宙船へ乗り込み雪が降る鉛色の空へ飛びたった。  円盤は彼女の哀しみを知らせるかのように積雪を宙に舞い散らせていく。  わざわざ悪天候を選んだのは発見者を警戒したのだが、ヘンリーは金色の円盤を眺めながら、(異星人との交流が特別な思い出ではなく、ごく普通の日常になってほしい)と、願わずにはおれなかった。                        了
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