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アクセルを踏んだまま、器用にハンドルを操作し道路をかっ飛ばす。
幸いにも初日に羽菜さんが着けてくれていたリングのおかげで誘拐された場所はわかっていた。
となれば後はマスターが用意してくれた車で向かうだけです。
「藍野、運転が荒い」
「すみませんマスター、でも今回は我慢してください」
車内が上下に揺れ、シートベルトをしていてもGが体にかかる乱暴な運転。
普段は安全運転を心がけていても今回だけは別です。
時は一刻を争う、フランシスが羽菜さんを連れ去った後で唐戸が何をするのか分からない。
そもそもこの誘拐自体がトラウマを引き起こすかもしれない、そう考えたら待ってる時間も惜しいんです。
「仕方ねぇ、そのままでいいから聞け。三枝さんが連れてかれたのは三枝グループの旧倉庫だ。そこに三枝唐戸がいると踏んで間違いないだろ」
「フランシス、なんで羽菜さんを攫ったんですか」
「さぁな、それは命令したやつに聞けばいい。俺も聞きたいことがあるしな」
そうでしょうね、マスターはアンドロイドが好きですから今回の件も内心腸が煮えくり返ってるでしょう。
「とにかく倉庫に突入したらお前はまず三枝さんの確保、俺は出てくるだろうアンドロイドを止める。それでいいな?」
「辛い役目を押し付けてすみませんね」
「いいさ、その代わり確実に保護しろよ。未喜渡さんへの顔向けができねぇ」
「分かってます、そろそろ着きますよ」
視界も車のライトで照らさないともう道は見えないほど深く暗い。
それに上り下りする坂も多い、山中を開いて作った道ですか。
それらを切り抜けて車のライトが旧倉庫への道を照らす。
これはある種の宣戦布告、お前らを逃がさないという宣誓です。
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