ポケットの中の小瓶

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「中村さんが捜査なさっているのは、どういった事件なんです? 確かにいじめは良くないことですけど、警察の方が捜査なさるようなタイプの事件ではないと思いますけど」 「おっしゃる通りです。普通なら警察は学校内のいじめについて捜査したりしません。しかし、このケースは、ちょっと特殊なんですよ」  そのとき、玄関の方からドアが開いて閉まる音が聞こえた。そして、戸口に六十過ぎと思しい男が現れた。  後ろに撫でつけた髪はすべて真っ黒で、顔には皺ひとつなく、若々しさも感じさせる。  ガラス玉のような小さな目が、童話に登場する狡猾なキツネを連想させる。こちらも俳優と言っても通用しそうな端正な顔立ちをしていた。  敏江が男を僕に紹介した。 「中村さん、主人の雄一です」  僕は立ち上がって、再度頭を下げた。 「初めまして、お邪魔しています。警察の中村と申します」 「はあ? 警察?」  雄一は怪訝そうな顔をしていた。  まあ、それは仕方がないだろう。日課のジョギングから帰ってきたら、こんな訪問者が自宅に来ていたのだから。  敏江は僕がやってきた理由を手短に雄一に説明した。  雄一が敏江に言った。
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