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「実は、とある事件を捜査しておりまして。その件でちょっとばかり、お話を伺ってもよろしいですか? できればご主人ともお話をさせていただきたいのですが」
敏江のきょろきょろと動く目が「なんだかうさんくさい人だな」と言っている気がする。
しかし、彼女はドアを大きく開けてくれた。
「わかりました。どうぞお上がりください」
三和土で靴を脱ぎ、敏江に続いてリビングに入った。
古めかしい調度品に囲まれた部屋。天井からは豪奢なシャンデリアがぶら下がっている。
部屋の中央に据えられた柔らかそうなソファに腰かけると、彼女は言う。
「いま、主人はジョギングに出かけています。それが休みの日の日課なんです。そろそろ戻ると思うんだけど……」
腕時計を見た。時刻は朝の九時半を少し過ぎている。
大きな木製のテーブルをはさんで、僕たちは向かい合った。
「それで……中村さん……でしたわね。私たちに聞きたいというのはどんな話なんです?」
僕はソファに深く座りなおした。
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