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「話はわかった。すまないが、お茶でも淹れてくれないか。長い間、走ってきたんで喉がカラカラなんだ」
「わかりました。そう言えば中村さんにもお茶も差し上げないで、どうもごめんなさいね」
敏江は僕に頭を軽く下げ、リビングを出ていった。
おそらくキッチンに向かったのだろう。廊下の反対側からカチャカチャと食器を用意しているらしい音が響いてくる。
雄一が正面に腰かけて僕の顔を覗き込んだ。
「それで中村さん。S高校の生徒さんが自殺したことと、我が家とどんな関係があるというのです?」
敬語で話してはいるが、その口調には明らかに不満そうな響きがあった。
「杉原さん、お子さんは何人いらっしゃいますか?」
「子供? 二人だが」
ごくりと唾を飲み込む雄一。
何か事情を知っているのだ。そんな確信が僕の頭の中をかすめる。
「二人とも女の子ですよね?」
「あ……ああ。そうだが」
「そして次女の萌花さんはS高校の卒業生だ。そうですね?」
雄一の眉が、わずかにつりあがる。
「はっきり言いたまえ。それがどうしたというんだ」
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