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「大変言いにくいことですが、萌花さんがいじめをしていた四人のうちの一人であると我々は考えているんですよ」
雄一は僕の言葉を聞いて、貝のように黙り込んでしまった。苦しそうに目をじっと閉じ、唇を固く結ぶ。
重々しい沈黙が部屋の中を満たす。
そこへお盆を持った敏江が入ってきた。ティーカップを三つテーブルに置いて、雄一の隣に座る。
カップの中身は鮮やかな琥珀色をしたレモンティーだった。
「さ、どうぞ。中村さん、お飲みください」
「いただきます」
丁寧に言い、僕はレモンティーを一口飲んだ。
カップに手をつけないまま、雄一が敏江に憤然とした表情で言った。
「こちらの刑事さんは、萌花がいじめをしていた……と勘違いしているようなんだ」
「まあ、そんな」
僕は二人の顔を見ず、レモンティーをもう一口すすった。
顔を上げて、二人の顔を正面から見据える。
「まだ確定とは言えませんが、萌花さんがいじめをしていた可能性はかなり大きいと我々は見ています。それだけではありません。娘さんがいじめグループのリーダーだった可能性もあります」
「そんなバカな」
雄一は今にも立ち上がりそうなほど興奮していた。
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