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「これ以上に効率の良い方法はありません」
「効率が云々って話じゃないわ!」
私はベンチにマオを座らせた。
これは人の心の機微云々どころではない。
「好きな人の写真は大切なものなのよ。それを勝手に盗るなんて!」
「ポケットのような落ちる可能性のあるものに入れているのです。なくしたところで補充すれば良いのでは?」
昨日マオのポケットをのぞき見をしようとした私に言えることではないけれど、マオはもう少し倫理観とか道徳心とかを学ぶべきだと思う。
「このおまじないの肝がポケットの中にあるのは、どこに行くのにも好きな人の写真を肌身離さず側に置いておきたい気持ちがあるからだわ。それなのに、知らぬ間になくなっていたら悲しむわ」
「そういう、ものでしょうか」
「そうよ。このおまじないを考えた人だって、きっと恋する気持ちを大切にして欲しいと思ってこのおまじないをつくったはず。それを盗むのは冒涜よ」
マオは本当にわかっていないような顔をする。
きっとここで何を言っても無駄だ。だから、目で見て、耳で聞いてわかるように顕にすべきだ。
「わかったわ。成瀬さんは確かに私たちに調査を依頼した。でも、このやり方だと一般の人に恋愛へのモチベーションが下がる人が出てくるの。それは婚活相談事務所にとって困ることだわ。ーーだから、私に良い案があるの」
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