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*  その後、私達は暫くインタビューを続けた。マオも慣れてくるとインタビューに加わって、時折トンチンカンな返しをしながらも情報収集をしてくれた。  誰も居なくなった婚活相談事務所に戻って、先日のマオが集めてくれた数的なデータと、今日集めた実際の街の人の声で成瀬紀香に提出するレポートをつくる。 「こういうのはマオの方が得意よね」  私が見聞きして感じた部分をまとめたメモをマオに渡そうとすると、マオが袋を手に持って考え込んでいる。それは私の作ったおまじないセットだ。ポケットから盗み出したらしい。 (まずい) 「ちょっと。あれだけ言ったのに」 「俺は、やっぱり美柑さんの弱味を握っておくべきかもしれません」  もしマオが中の写真を取り出して、自分が写っていることに気が付いたらどう思うだろう。何も思わないかもしれないし、馬鹿にしてくるかもしれない。 「私を脅したとしてどうするの?」 「いえ、美柑さんは俺に出来ないことを軽々とやってのけるので。居なくなると困るかもって。......でも、そういうのじゃ、ないんですよね。もっと俺と一緒に居たいって美柑さんに思ってもらわないと」  私のおまじないセットをマオはポケットに返してくれた。私は何も言えなくなって、紅茶を淹れてくれるとかなんとか言って顔を隠した。 (そんなの、プロポーズと一緒じゃない!)
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