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そういえば、マオの常識がズレているということは、共同生活をしているこの人の常識もズレているのかもしれない。私が呆れて帰ろうとしたところ、成瀬紀香がふわりと私たちの頭を撫でた。
「けれど、簡単にポケットから取ってしまえば暴けるものを暴かなかったあなた達を私は評価したいと思います」
「そう、あ、ありがと」
「ありがとうございます」
なんだか、照れ臭い。それはマオも一緒だったようで目が合った。
そのとき、婚活相談事務所の天井から”ばぁ”という声と共に女の子がぶら下がってきた。
「美柑ー! あたしあのポケットの奴理解したー!」
「カ、カナヱ!? なんでここに!? 理解って!?」
「こういうことでしょー?」
カナヱは一切の迷いもなく私をマオの方に突き飛ばした。視界の端に見えたのは私が買ったメモ帳の切れ端。
「え」
重なる唇と唇。そういえば、女学院で恋バナをした際に三人で盛り上がっておまじないに足したものがある。ーー”事故で偶然唇が触れる”。
「位置ピッタリー!」
「!?$<|#$£•_:$£!?」
離れた唇、平然とした顔のマオ、無表情になった成瀬紀香、テンションの高いカナヱ。そして驚きとかラッキーとかこんなタイミングじゃないとかでぐちゃぐちゃな感情の私。
一瞬にして部屋の中はカオスだ。
(もう絶対にポケットの中に秘密は入れない!)
おわり
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