プロローグ

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 廊下でぶつかった上級生のポケットから一枚の紙と写真がヒラリと舞い落ちる。このダンディーな顔は。 「よもやご覧になりませんでしたよね?」 「え、えぇ。何も」  上級生の剣幕に押されて咄嗟に嘘をついた。上級生は写真を愛おしそうに拭いてから戻し、立ち去る。私は思わず二人に確認した。 「あれ、コメディアンの”履いてません”の人の写真だったわよね」 「想い人が居ない時は理想に近い人の写真を入れると良い出会いがあるんだって」 「理想......ね」  想い人、卒業と同時に結婚が決まるこの富裕層向け女学院では恋愛はこの時期にしか出来ない憧れのあるものだ。とはいえ、親のエゴによって異性から隔絶された15歳の私たちは男の子の知り合いを得ることすら通常は難しい。 「......マリとカスミもやってるの?」  マリは赤面し、カスミは”流行りだから”としれっと頷いた。 「そう。まぁ、私には関係のないことだわ」
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