罪な思い×罪の意識=PUER

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 佐藤も米倉も大沢もみんな独り暮らしなのである。そして、それもみんなそれぞれ結構な部屋に住んでいる為、実家からの仕送りだけでは一ヶ月生活するのが精一杯と云うわけで(これは大沢だけの云い分で、米倉は「バイトは趣味の一環」だと云って)バイトをしているのだ。 「だって、金が必要な事ってそうそうないし。今のままで充分やりくりできてるし」 「サイアクや……。オレもそんなん云うてみたい」  遊ぶ金欲しさとコネ稼ぎと、下心丸出しでバイトしている大沢は佐藤の言葉にがっくりと項垂れる。 「はいはい。お喋りはここまでにして練習始めよう。学祭はすぐそこまで迫ってきてるんだからさ」  米倉の言葉と叩かれた手の音を合図に、お喋りタイムは打ち切られ佐藤も大沢もそれぞれ定位置につき始める。  佐藤はギターを抱え、米倉はキーボードスタンドの前に、そして大沢はマイクスタンドの前に立ち、大きく深呼吸すると米倉の方を振り返る。目が合った米倉は、一つ頷くとカウントを始め練習曲をスタートさせる。  彼らの練習は夜まで続いた……
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