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「何がいいかな? ……そうだ、〇〇〇なんてどうかな? 最近よく流れてるしさ」
米倉はシンセサイザーを操作しながら、最近有線やラジオ・テレビなんかでよく耳にするアーティストの新曲を選曲した。
「いけるか?」
大沢の問い掛けに、黒崎は大きく頷いてみせた。米倉の注文した曲は、黒崎のプレイヤーにも入っていた。黒崎にとって全く聞き覚えのない曲ではなかったので、黒崎自身も少し安心した。
米倉は、元々入っていたのかシンセサイザーから楽曲をロードし始め、オートプレイにするとその場から離れ自分は観客側へと回る。そして米倉・大沢・佐藤はいつも練習している場所を黒崎に譲り、自分たちはギャラリー側に腰を下ろした。
米倉も大沢も、黒崎の歌唱力に多大な期待を持っていた。何しろ、佐藤が太鼓判を押すほどの者だったからだ。
流れ出すイントロ。黒崎はゆっくりと目を閉じてその曲に入り込む。もう、黒崎の中で目の前に居る三人の存在はなくなっていた。
そして、メロディーラインに黒崎の声が乗った瞬間、米倉も大沢も驚きに目を丸くさせる。
「へぇ~、やるやんアイツ」
「これは……なかなか。佐藤くんが欲しくなる理由……分かるような気がするなぁ」
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