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五分弱の曲がフェードアウトするや、黒崎はマイクから手を離しゆっくりと目を開けて三人を見据える。
その瞳にはもう不安という文字は見られなかった。そして歌った事に対する心残りも見られなかった。
「凄いよ。佐藤くんが欲しがるだけの事はあるね。それに、佐藤くんの曲とも相性が良さそうだ」
「そやな。まぁ、オレにはまだまだ適わへんやろうけどな」
大沢の言葉に、「よく云うよ」と米倉と佐藤が同時に突っ込んだのは云うまでもないだろう。
「これで佐藤くんのボーカリストは決定だね」
「でも……」
米倉の言葉に、黒崎はチラリと大沢に視線を向ける。
「ん? 何や、オレか? オレはソロに転向。曲はもちろん信ちゃんに頼むつもりやけどな。そやから、オレの事は気にすンな」
そう云って大沢は豪快に笑った。
安堵した黒崎は佐藤を振り返った。佐藤は口許に笑みを浮かべて「お疲れ様」と柔らかく笑った。
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