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「オーッス、おはようさぁん」
一限目から四限目まで姿の見えなかった大沢が、部室のドアを開け開口一番そう云った。
今はお昼休み。次の時間、佐藤と大沢のクラスは自習になっていたので、佐藤はギターのチューニングがてらに部室にいたのだ。
「“遅よう”、大沢くん。また随分ごゆっくりな登校だね」
「……何かお前、最近信ちゃんの影響か知らんけど、イヤミ云うのがうまなったな」
大きなため息をつきながら、大沢は佐藤の向かい側にあった椅子を少し引き寄せると、背もたれを前にしてそれを跨ぐように腰を下ろした。
「教室行ったら黒板に“自習”って書かれてるし、サトやんはどこ行ったか聞いたらみんな知らんって云うし。……まぁ、ここに居る事は最初から分かってたんやけどな」
さも自分には佐藤の行動パターンが読めているかのような大沢の言葉に、佐藤は口許に意味深な笑みを浮かべていた。
「……何やねん?」
「いや。大沢くんが知っててオレが居そうな場所って、ここ以外にないじゃん。もしここに居なかったら、捜し回ってたんじゃないかなって。想像したらちょっと笑えてきてさ」
そう云う佐藤の頭の中では、佐藤を探して校内を手当たり次第に駆け回っている大沢の姿が思い浮かんでいるのであろう。微笑みすら浮かべている佐藤に、大沢は不貞腐れたまま腕組をして椅子の背もたれ部分に頬杖をついていた。
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