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「コラ、サトやん! ドコ行くつもりやねん!? 部室はこっちやろうが」
六限目終了後、掃除当番に当たっていない二人はもちろん真っ直ぐ部室に向かう……筈だった。が、佐藤は途中で方向転換してしまったのだ。
「ごめん。何か調子悪くて……気分変えたらすぐに行くから」
大沢の言葉を待たず一方的にそう云った佐藤は、いつも気分が乗らない時に行く秘密の場所へと向かった。
「……今みたいに明るかったらいいんだけど、暗くなってくると不気味なんだよなぁ……」
佐藤は苦笑いを浮かべながら、校内の敷地の一番東端にある潰れかけた旧校舎の建物に向かってそう云った。潰す資金を惜しんでいるのか、立ち入り禁止の立札を立て掛けただけのその建物は学校の七不思議のネタにされているほどの場所だった。それ故か誰一人としてこの旧校舎に近付こうとはしないので、たまに一人になりたいと思う佐藤にとっては好都合な場所で合った。
鍵が潰れている裏口とへと回ると、この建物内では一番綺麗な職員個室へと向かった。
そして目的の部屋に近づいた時、どこからともなく歌声が聞こえてくる。瞬間、佐藤の足はその場に凍りついてしまう。耳をすませば、やはり誰かの声が佐藤の耳に微かに聞こえてくる。空耳ではないようだ。
しかし、この旧校舎には怖がって誰も足を踏み入れない。残る可能性は……
「マ、マジかよ~……」
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