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「あ……ゴ、ゴメン。邪魔……した、カナ?」
「……」
佐藤のしどろもどろな言葉にも、青年は微動だにする事もなく何も答えない。それどころか、どこか挑むような視線を佐藤に向けていた。まるで警戒心剥き出しの子猫のようだった。
「あ……えっと……ここさ、皆怖がってててさ。誰も来ない場所だから……キミがいて、最初ビックリしたよ。幽霊かと……」
「別に……ここだったら独りになれるんじゃないかって……そう思って来ただけだよ」
佐藤の言葉に被せるように発せられた青年の言葉。噛み合ってるようで噛み合っていない二人の会話。言葉を終えた彼が、終了と云わんばかりにふい、と視線を逸らすと、佐藤は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「歌……上手いんだね。……そう云えば、今日部室に来てくれてたよね? せっかく来てくれたんだから、ちょっとでも寄って行けばよかったのに。入部希望? キミ、かなり歌上手いし……」
「違うって云っただろ!」
「ッ!?」
気まずさから多弁になっていた佐藤だったが、怒り口調の彼の言葉に驚いて口を塞いだ。睨むように振り向いた青年だったが、そんな佐藤の様子を見て、彼はバツが悪そうに再び窓の外の景色に視線を移した。
「ゴ、ゴメン……」
~~~♪
「ッ!?」
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