プロローグ

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「じゃあ、“仕事”終わったって伝えといて。金もちゃんと口座に振り込んどいてって。……ん? 飲み? あぁ、また今度な。じゃ」  通信切りのボタンをタップしたハルトは、大きなため息をついて携帯を握り締めたままその手をベッドの波に沈める。  今のは、彼のアルバイト先である事務所への“仕事”終了報告の電話だった。  ハルトの“仕事”内容とは、金と引き替えに寂しい人々の心を満たす……いや、飢えた肉欲を満たす為だけに肌を重ねる所謂“売春(ウリ)”。しかし、女性・男性を問わない珍しいこの店で、何故かハルトの客層は男性だかりだった。  ハルトは都立青陵高校に通う、正真正銘の高校一年生。もちろん学校側はバイトを許可してはいない。……が、その校則を守っている者はゼロに近いだろう。バイトしていないのは、ヒマのない者か金持ちの令嬢子息ぐらいのものだ。大なり小なり、殆どの生徒が何らかのバイトをしているのだ。  だが、教師たちも面倒事は避けて通りたいクチで、もし仮に当校の生徒がバイトをしているのを見つけたとしても、軽く注意を促すだけであとはほぼ黙認の型(かたち)をとっていた。
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