罪な思い×罪の意識=PUER

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 そして同時刻。 「……おはようございます」  どこの職場でも同じなのかもしれないが、夜なのに「おはよう」と云うのはある種芸能界みたいで黒崎は嫌気がさしていた。 「オ~ッス、ハルト。今日はドコ?」 「まだ聞いてない。今来たとこだし。今から聞きに行く」  黒崎はバイト先の事務所に来ていた。携帯に呼び出しのメールが入った為だ。  事務所内は同年代のバイト仲間たちが、ソファーに座って雑誌を読んでいたりテレビに釘付けになっていたり、仲間同士でバイト内容で会話の花を咲かせていたりとかなり入り乱れた状態だった。下は黒崎と同じ年代から、上は二十代後半とやや年齢層は狭い。 「よぉ、ハルト。こないだの○○会社の副社長とか云うヤツ、どうだった?」 「……べっつに。最悪にがっつくオヤジだったよ」  気安く喋りかけてくるバイト仲間に、黒崎はうっとおしさ丸出しにしてそう云い放った。しかし、その黒崎のうっとおしさは自分に向けられたものではなく、その副社長とやらに向けられたものだと勘違いした幸せ者は、「そうだろーな」と再び仲間内で盛り上がり始めた。  群がるバイト仲間の間をすり抜けて、黒崎はさっさとマネージャー室へと向かった。
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