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「でも、この中で何か見てたわけじゃないから……」
「目は開けてたんでしょ? だったら目には何かしら映ってるんだから、その分負担はちゃんとかかってるんだよ」
米倉はそう云って佐藤の近くにあった椅子を引くと、それに腰を落ち着かせてニッコリと微笑んだ。その米倉の笑顔につられるように伊藤は微笑み返すと「そうですね」とだけ答えて椅子の背凭れに体を預けていた姿勢を正す。米倉は佐藤の言葉にフッと優しい笑みを浮かべる。
「このスコア……学祭のヤツ?」
スコアスタンドに乗せられていた数枚のスコアを手に取って、米倉は佐藤の方を見ずにそう云った。
この軽音部には結構な人数が“書類上”所属している。……が、その中で勝手にグループを作り、勝手に活動しているお気楽クラブなのである。一人だけで活動している者もいれば、十人近くで活動しているグループもいる。活動日は名目上毎日となっているが……部員全員が一度に集まる日と云うのは絶対ないと云っても過言でない程だった。
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