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大沢は将来、服飾関係の仕事に就きたいらしく、今の内にその業界へのコネと技術を身につけておこうという作戦らしい。だが、音楽も続けたいと、かなりワガママな事を豪語している状態だった。
「信ちゃんこそ、今年受験やっていうのにまだバイトしてて余裕やなぁ。勉強の方は大丈夫なんかぁ? 余裕かましてたら後で泣く事になんで~」
「ご忠告ありがとう。でも、“キミとは違って”志望校の合格圏内には余裕で入ってるんで。それに、ボクのバイトは楽器の取り扱いだから深夜まで長引く事はないんでね~」
余裕の微笑みを浮かべながらそう云った米倉に、大沢は面白くないとでも云いたげに今度は佐藤に絡み始める。
「なぁ、サトやんは何のバイトしとんねん? そういう話聞いた事ないなぁ」
「そう云えばそうだよねぇ」
大沢の言葉に、傍らの米倉もそう云って頷いていた。
佐藤はあまり自分のことは積極的に話そうとはしない。だが自分から話はしないだけで、聞かれたことに関しては答えられる範囲内なら答える、と云うスタンスの人間だった。
「いや、別に自分から話す事でもないかなって思ってただけだから……」
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