第2章 池田恒興の正室。

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信長「恒興は生駒屋敷に住んでいる 吉乃の事を知っているだろう?」 信長の側室であり寵姫でもある吉乃(きつの)…本名・生駒類の話でした 恒興「はい、存じております。」 恒興も吉乃には何回か逢っており、 儚げな美人であると記憶していました 信長「吉乃は俺の舅だった斎藤道三に仕えていた兵士・弥平次に嫁いでいたのだが戦によって夫を喪い娘の(しの)を連れたまま俺に再嫁したんだ…」 吉乃の事は… 何となく知ってはいましたが… 恒興「吉乃様も夫を戦で喪い… 辛い想いをなさったのですね?」 信長から語られた壮絶な寵姫の半生。 但し…琴葉と吉乃には決定的に違うところがありました…。   それは… 恒興「戦の後始末で夫を喪った琴葉と 戦で夫を喪った吉乃様では…」 そればかりではなく… 信長「吉乃は女児だから 篠を伴い再嫁する事が出来たが…」 恒興「坊丸と琴葉は…」 逢う事も出来ないまま… 引き離されておりました。 しかし… 信長「琴葉の手元で育てていたら… きっと坊丸の性格は…」 琴葉「歪んでいたと仰せですか? 夫に似た子に育てるかも知れぬと…」 いつの間にか琴葉が 信長と恒興の後ろにおりました。 琴葉「愛する人に似た子に育てたい…なんて思うのは…私の自己満足…かも知れませんが…あの子の中に殿の面影を見たいと思うのすら罪ですか?」 琴葉の手には信行から貰った短刀が しっかりと握られておりました。 琴葉「ならば…私は殿の元に逝き… この手を2度と離したり致しませぬ…」 すると… 恒興「琴葉…いつまで過去に縛られているんだ?俺は君に…前を向いて欲しい…まだ信行殿が好きならば好きなままでも良いから…生きて欲しい…」 それが… 恒興からの願いでした。 しかし… 信行を運命の相手だと信じていた 琴葉からすれば… 「運命の相手は…違いました!」 だなんて簡単に認められないのも 道理でございます。 それに… 琴葉「教育係だったのに…殿を裏切って敵方に密告した者に坊丸の教育係をさせるなんて…不条理の極み…」 琴葉からすれば教育係でありながら 信長に信行の事を密告した柴田勝家が坊丸の教育係を担うなど… 琴葉「それどころか笑止千万!」 許せないどころの騒ぎではなく、 言葉を変えながら自らの気持ちを伝えたというのに… 信長「…いつまでも同じ場所にいた信行に織田の家督を継がせる事は出来ぬ…ただでさえ…この尾張は…」 隣国である駿河国を治める今川義元の脅威にいつ晒されるか分からないところにあるのでございます。   今川義元「まろは京に上洛し今川の旗を掲げる為だけに今まで生きて来たでおじゃる!まろの夢を潰そうとする織田の小せがれなど踏み潰してくれるわ…」 相手は…あの武田信玄の姉を正室に迎える程の変わり者…ではなく…実力者 恒興「その内、今川の全力を持って この尾張を潰しに来るのは明白。」 琴葉にとって信行は… 信行「秀孝の笑顔を見ているだけで 私は幸せな気持ちになれるんだ…。」   品行方正で家族思いの優しい夫…。 だけど… 琴葉「殿…、殿…。」 琴葉が必死に呼んでももう… 信行「琴葉、落ち着け?」 優しく包み込むようなあの声は… もう…聞こえる事は…ない…。 恒興「琴葉…君の殿は私だ…」 琴葉の夫である信行の歩みを止めた 憎き仇の乳兄弟であり信長の命で再嫁した(おっと)が代わりに返事をし 琴葉「私は…男達の慰みものじゃない、愛する人を奪った者達の情けを(こいねが)いながら…生きろと言うの!?」 恒興が願えば願う程… 信長が話せば話す程 頑なになる琴葉…。 恒興「どうすれば…良い?」
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