僕は本気だ!

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僕は本気だ!

 小学生6年生、卒業文集に、僕はこう書いた。 【将来は、忍者になる】 「タツキ、まだそんな夢持ってんのかよ~」  卒業文集を読んだ隣の席のユウタは、僕に肘でぐいぐい押しながら笑ってきた。 「冗談とかじゃない、僕は本気だ」  僕は、真剣な面持ちで、ユウタを睨み付けた。  その剣幕に、思わず怯むユウタである。 「幼稚園の時から、お前は忍者になるって言ってたもんな、もうすぐ中学生だってのに、まじかよ」 「友達辞めたきゃ辞めていいよ」  自分の夢を笑われて、僕はつっけんどんに答えた。  たじたじのユウタは、頭をポリポリとかく。 「……わかったよ、じゃあ、いいこと教えてやるよ」  そう告げると、ユウタは僕の肩を引き寄せる。 「あるコンビニの店長が、やっべー動きをしてて、それが忍者みたいなんだ」  ユウタは、持ち込み禁止のスマートフォンを隠しながら見せてきた。  動画アプリで、咲耶チャンネル、という動画を見せてくれる。 『今から店長が、忍者みたいにすごーい速さで仕事しまーす☆』 『ちょっと、仕事してる様子撮影しないの』 『ほらほら、棚がガラガラですよー? お客様もレジ並んじゃいそうですよー?』 『あーもー!』  店長と呼ばれた男は、見た限りゴリラであり、忍者どころか人間なのかさえままならない。  しかしそこには、目にも止まらぬ速さで品出しをこなし、レジ打ちこそは人並みだが、レンジやタバコのやり取りは、これまた瞬時。 「……すっげー……」 「だろー!? 忍者みたいだろ?」  思わず、僕の口から感嘆の声が出ていた。 「ここ、どこのコンビニ!?」  僕は、ユウタから動画のコンビニの場所を教えてもらった。
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