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十七話 事故【運転手】
20分後バスの中にはツアーに申し込んだ25人が座席に座っていた。
そして運転手はバスの中に乗り込むと「これで全員揃いましたね。大丈夫そうですね。お隣の方が座っているか皆様お確かめください」運転手は私達に笑顔でそう言った。
私達は「はい座っています」バスの運転手にそう言った。
するとバスの運転手は私達にぞっとする言葉を言ったのだ「それではバスツアーをお楽しみください。地獄のバスツアーを」それを聞いた時、
私達はこれもホラーツアーの演出かと思っていた。
「怖ーい最初からホラー」そう言って笑っている人もいた。
その後、運転手の井の頭は私達に言った。
「それじゃあ私はこれで」そう言うとバスから降りようとしたのだ。前の方に座っていた女性は「ちょっと何で降りるの?運転手が降りたらツアーにならないじゃない?それに地獄のバスツアーって何?」
「おい、待てよ井の頭さん」
前の席に座っていた男性は降りようとする運転手の腕を掴んだ。
すると井の頭は「汚らわしい触るな!」そう言って自分の腕を掴んだ男性を突き飛ばしさっさとバスから降りて行った。
運転手がバスから降りるとバスの扉も窓も全て鍵がかかったように完全に閉まってしまったのだ。
そう、バスツアーに参加した25人は全員バスに閉じ込められてしまったのだ。
25人は窓から見えた井の頭に「助けてくれ〜ここから出してくれ」「冗談でしょう?早く戻って来て」窓を叩きながら外にいる井の頭に必死で頼んだ。
「どう言う事なんだよー。演出だよな?」
運転手の井の頭は私達のバスを見て笑いながら手を振っていた。
「行ってらっしゃい地獄のバスツアーを楽しんでください」そう言いながら片手に持っていたリモコンのスイッチを押した。
「おい、あの運転手今リモコンみたいなの押してたぜもしかしたら?」
その瞬間バスはゆっくりと動いた。「キャ〜バスが動いた!」
「誰か〜誰か助けて」バスに乗っている25人は全員叫んだ。窓を叩きながら。。。
「このバスいったい何処に向かっていくんだろう?地獄って?」その時、鴨の下桜はある事に気づいた「ねえ、みんなバスの運転手もう1人いるんじゃない?さっきの井の頭さんときっと交代したんだよ。ほら運転席見て、誰か井の頭さんと同じ制服着て帽子かぶって運転席に座ってるじゃない。ホラーツアーだからあれは演出だよ」
他のツアー参加者も「本当だ。なんだ〜運転手さんも黙ってるから気づかなかったよ。名前のチェックの時は気づかなかったなー。そういえば毛布掛けてあって盛り上がってたから隠れていたんだよ。きっと〜」
「なんだそうか〜」
「そうだよねー誰もいないのにバスが動く筈ないよね?」
前の席に座っている松田かなえはそう言って運転手の顔をかがんで覗き込んだ。
すると松田かなえはみるみるうちに顔が青ざめていきぶるぶると震えていた。「どうしたの?かなえ〜」松田かなえの友人山形郁美はかなえに声を掛けながら運転手の顔を覗き込んだ。
そして山形郁美はバスに乗ってる全員に聞こえるくらい大きな声で言った。
「このバスの運転席に座っている運転手〜人間じゃない!人間のように作られた人形だよ!この人形はただここに置いてあるだけだよ!動かないし、運転もできないんだよ」
その言葉を聞いたバスツアーの参加者は「えっ?じゃあ私達はどうなるの?」「何処に連れて行かれるの?」「じゃあやっぱりあの運転手が持ってたリモコンでこのバスは動いてるの?」
「俺達死ぬのかよ?リモコンで動いてるならこっちで操作したとしてもバスを止められない」
「どうしたらいいんだよ?」
「おい、バスのスピードが徐々に速くなっている」
「キャーぶつかるー」
「キャーどんどん速くなる」
「みんなとりあえず座って落ちないように捕まっていよう」バスはどんどんスピードを上げてどんどん進んで行った。
そして運転手の席に置かれていた人形もバスが曲がった時椅子から落ちて人形の首がバスの床にゴロゴロと転がった。
そして、25人を乗せたバスは山道へと進んで行った。
「ここは?何処?まだバスは動いてる」
山道を進んで行ったバスは25人を乗せたままどんどんスピードを出しながら山の奥へ奥へと進んで行った。
バスに乗っている25人はトイレ休憩もないまま夜の山の中にいた。
そして携帯の懐中電灯の灯りをつけながら窓を照らした。バスの中から窓の外を見た景色は山の崖だった。
「キャ〜私達、崖からバスごと落ちそう」
「きっともう死ぬのかも?」
「大学やっと卒業してこれから就職するのに」
「私も大学卒業したばかりだったのに」
25人はその時、初めてわかったのだ「えっ?もしかしてみんな大学卒業して卒業旅行?」
「そうだけどみんなそうなの?」
その時、近藤義男と言う男性が言った「みんな大学卒業旅行なんてそんな偶然がある筈ないもしかして俺達はこのツアー会社に選ばれたんじゃないのか?初めからこうなる事はツアー会社からしたらわかってたんだよ」
鴨の下は言った「どう言う事ですか?」
近藤義男は言った「このチラシは僕の家のポストに入っていたものなんです。
考えてみたら今時、ネットでツアーを予約する時代もしくは旅行会社の窓口で予約する時代新聞の折り込みに挟んであるとかならわかるけど今時、新聞なんて誰もとらない。だからと言って旅行のチラシだけポストに入ってるなんて珍しくないか?」
鴨の下も言った「確かにそうね私も自分の家のポストにこのチラシが入っていたの」
「俺もだよ」「私もよ」近藤は言った「もしかして俺達はあの運転手を知らないけど、運転手やバス会社の人間は僕達の事を知ってるんじゃないのか?」
鴨の下桜は言った「だとしたら私達はどうなるの?殺されるの?」
近藤義男は言った「そうかもしれないな。きっと僕達は誰かに恨まれてるんだよ」
「えっ?恨まれてる?」鴨の下桜がそう言うとバスはバンという音と共に窓から見た崖にどんどん落ちて行った。
「キャー落ちるー」「助けてー誰かー」
真っ暗で周りに誰もいない山道では25人のバスの中の声は誰にも気づかれる事はなかった。
ただどんどんとバスは崖の下に落ちて行った。
続く
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