十七話 事故【6人】

1/1
前へ
/197ページ
次へ

十七話 事故【6人】

 卒業旅行を楽しんでいた筈の25人が乗ったバスは崖の下に落ちた。誰かに故意に事故を起こされたのだった。バスに乗っていた25人のうち命が助かったのは僅か6人だった。  残りの19人の男女はバスに乗ったその日に命を落としてしまったのだ。  6人はヘリコプターから降りて来た男性に暗い部屋に運ばれていた。  6人が目を覚ますと周りは真っ暗で自分達が今何処にいるのかわからなかった。6人の両腕と両足はベットに手錠のようなもので動けないように固定されている事に6人は気づいていた。  そして、ベットの側に誰かいる気配を感じていた。  ベットの側にいる人物は蝋燭を持ってフードをかぶって歩いていた。  そしてその人物は6人に言った。 「明日は予定通りお客様の前で処刑を行います」 6人は「処刑ってなんだよ?どう言う事なんだ?」 と話そうとしたが話すらする事ができなかった。 口には頑丈なテープが貼られていたのだ。  「うーん、うーん」「う、うー」6人は何も言えなかった。  その時、蝋燭を持ちながら歩いていた男は言った。  「今は暴れない方がいいですよ〜すぐ死なれると処刑する時に面白くないですからねー。軽く点滴をしていますからね。危ないですよ〜動いたら」 そう言って「あっはっは〜あっはっは〜」 と大声で笑った。  暗くてしんと静まり返っている部屋には男の笑い声だけが響いた。  他に側にいた蝋燭を持っている男は言った「何故?こんな事を?とか思っていますよね?それはあなた達が昔、相当悪い事をしたからですよ。  私達の仕事はね。依頼者の目の前であなた達を痛ぶってこの舞台の上で殺害するエンターテインメントの復讐劇団なんですよ。 依頼者は勿論あなた達が昔、殺害した子供の保護者とか祖父母や兄弟なんですよ。  身に覚えありますよね?皆さん昔、誰かを殺しましたよね?さあショーは明日ですが苦しんでいる姿だけでも見せましょうお客様、谷村さん照明の電気をつけてください。お客様の椅子のところと舞台にお願いします。舞台の膜も開けてください」  「はい、わかりました。団長」谷村と言われたその男は舞台の裏方の仕事をしていた。 舞台の膜が上がり照明灯りのせいか周りは一気に明るくなった。 そして、6人は周りを見た。 「ここは〜舞台の上?そして前は客席?たくさんの人の声が聞こえる〜私達が殺されるのをまるで楽しみにしているかのような笑い声が聞こえる」 その時、客席に座っていた1人が言った「随分少ないけど?私の娘を殺した奴がいない。バスの事故で死んじまったか〜残念だな〜痛ぶられて苦 しんで死ぬところ見たかったのに」 舞台の上にいる男は言った「そうですねー。残念です。でも今年は6人も生き残ったんですよ。昨年は2人だったのにショーを楽しんで見学して行ってください。明日予定通りやりますので」 「うちの娘を殺した奴がいないなら俺帰るわ」 男は「そうですか〜またのご利用をお待ちしています」 そう言うと客席にいた男は帰って行った。  ショーの前の日に6人の姿を見せたのは自分の復讐相手がいるかどうか?を観客に見せる為だったのだと6人は悟った。  「私の復讐相手もいないから帰るわ」 「私の復讐相手はいたわ。鴨の下桜!あなたが中学の時、自殺に追い込んだ北見姫花の母親よ!明日楽しみにしてるわ!あーそうそうクライマックスはあなたの処刑に私も加わる事ができるの。楽しみだわ。ねーお父さん」 「本当だなー。よく生き残ってくれたよ娘と同じ事をしてあげようクライマックスには」 「そうねお父さん。一人娘を死ぬまで追い詰めた罪は重いわよ」 鴨の下桜は中学時代クラスメイトに酷い事をして自殺に追い込んだ過去を思い出していた。  他の5人もきっとそうだろう。観客席に座っている客はみんな自分達に復讐する為にお金を払ってエンターテインメントを観覧しにきたんだ。そして最後にとどめを刺す為に。  ここにいる6人いや、初めからバスに乗った25人は復讐される為に選ばれたに過ぎなかったのだ。 バス会社は初めから選んでいた人物の家のポストにチラシを入れたのだ。そしてその人物の友人もきっと過去に酷い事をして復讐される為に選ばれていたんだ。  そう、初めから私達が選んで旅行に来たんじゃない。私達が選ばれていたんだ。復讐する側の人間と旅行会社と復讐を代行するエンターテイン メントの劇団に。。。   6人は全てを悟った。 続く
/197ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加