十七話 事故【新しい客】

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十七話 事故【新しい客】

 団長は警察官に言った「そうですか〜お客様 なんですね。息子さんを殺してほしいと?ところでその息子さんは何処にいるんですか?」 警察官は言った「部下が今連れて来る。部下も秘密は守るから大丈夫だ」 「そうですか〜とりあえず書類に必要事項を書いてもらわないといけないので別室に来てもらえますか?お客様15分の休憩を挟んでからまたお芝居を再開いたします15分経ったらここに来てください。スタッフの皆さん警察官がお客様の息子さんを連れて来たらA会議室に連れて来てください」 団長がそう言うと「はい、わかりました」と復讐劇団のスタッフは答えた。  「それじゃあお客様A会議室に行きますので付いて来てください」 警察官は「はい、わかりました」と言い団長の後をついて行った。  会議室に入ると団長は一枚の紙を机の上に出した。「さあ、お座りください。こちらに記入お願いいたします。そして最後に名前を書いてください。  ところで何で息子さんを殺したいんですか? 今、芝居をしているんですが、みなさん自分の子供の復讐の為にここに来ているんです。  親が子供を殺したいなんて聞いた事がなかったものですから」  団長がそう言うと警察官は言った「私も息子が可愛かったずっとずっと愛情を持って育てて来た。昔はとても可愛かったなのに、中学からぐれて妻に毎日暴力を振るうようになった。  警察官の私がいる時は私が止めていたが、私にも仕事があるから、ずっといる訳にはいかない。  ある日、仕事から家に帰ると息子に殴られた妻が倒れていたんだ。  息子はその時、家にはいなかった。まだ息がある妻を私は自分の車に乗せて病院に連れて行った。  病院の医師や看護師が賢明に妻の治療をしてくれたでも、息子に殴られて肝臓が破裂した妻は 死んでしまったんだ。  私はこの世で誰よりも妻を愛していた。  妻の為ならどんな事でもした。だから息子を追い出そうとしたんだ。でも妻は自分の息子だからと言って何とかしたいといつも息子の事ばかり考えていたんだ。  それなのにそんな妻を息子は殺した。苦しむ方法で殺害してほしい」 団長は警察官に渡した紙を見て言った。 「足立区中央署の神谷信さんですね。それはお困りでしたね。では、息子さんをより晒し者にしましょう。まだ処刑されてない鴨の下桜と合同にするのです。  鴨の下をベットからお越し手錠を外し舞台の柱にくくりつけるのです。丁度舞台用の柱が二つあります。スタッフ達に頼んで息子さんと鴨の下をそれぞれ柱にくくりつけて2人とも弓矢で殺すのです。  そして弓で矢を放つのは私達じゃない。観客席のお客様にゲーム感覚で遊んでもらうのです。  だって息子さんは人を殴るなんてゲーム感覚として考えその結果奥さんが死んでしまったんですよね?  怯える奥さんを見ながら喜んで追いかけて殴った違いますか?」 神谷信は言った「その通りです。私に殴りかかって来た時も息子は神谷信一は何も反省しないどころか喜んでいたとさえ思う。お願いします。妻を殺した息子を私は許せない」 その時、A会議室のドアをノックする音が聞こえた 「はい、どうぞ」 そう言うと復讐劇団の水川が神谷信一を連れて中に入って来た。「さっき警察の泉尊さんから引き渡されました。そちらの警察の方の息子だそうです」   「親父〜嘘だよな?俺息子だよ?殺せないよな?小さい時から何でも我儘聞いてくれてたし、可愛がってくれたじゃないか?俺がいないと神谷家は廃れちゃうだろう?男は俺だけなんだから?殺さないよな?早くこの手錠外してくれよ。親父の可愛い息子だろう?」 神谷信は何も変わらない息子と甘やかして育てた自分自身に嫌気がさしていた。  そして神谷信は息子の信一に言った「息子?息子が自分の母親を死ぬまで殴るか?俺はお前を更生施設に入れようと母さんに提供したんだ。  なのに母さんはお前の事を決して見捨てようとしなかった。いつかは反省してくれると信じてな!それなのにお前は母さんを殺した。私にとって妻は結婚する前もした後もずっと恋人で誰よりもかけがえのない大事な人なんだよ。  妻より大事な人はこの世にいない。妻を殺したお前より妻の方が大事なんだよ。団長スタッフの方お願いします。こいつをみんなの前で晒し者にしていたぶって殺してください」 息子は涙を流しながら「嘘だろう?親父?何とか言えよ親父〜やり直すチャンスをくれよ」 神谷信は信一に冷たく言った「やり直すチャンス?チャンスなんていくらでもあったよな!団長お願いします。私は観客席で楽しませてもらいます」 「助けてくれ〜親父〜親父〜」神谷信一の声も父親の信には届かず信一はそのまま舞台に連れて行かれた。  そして、舞台に設置してあるスピーカーから声が流れた。  新しいお客様の息子さんが舞台に登場しますのでその準備で少し二部は時間がかかります。でもこちらはお客様も参加出来る楽しい舞台なので後20分待ってください。その間にトイレなど済ませておいてください。その声を聞いた観客席の観覧者は誰も帰る人はいなかったそれどころか?「参加出来る?じゃあ俺達も〜殺せるんじゃないか?」 「えー私も殺せるの?楽しみ〜」 「ワクワクする〜20分待っても仕方ないよね」 「そうそう、人が苦しむのを見たいんだから」 「何だかドキドキする」  客席の観覧者は目を輝かせて口々にお喋りをしながら舞台が始まるのを待っていた。そして観客席に配られた次の復讐劇団の予定表を見ながら口々に話していた「今度は北海道でやるみたいね〜。次は真冬か〜雪に血の雨が降るような舞台かしら?舞台名は復讐の彼方にだって怖そうだけど〜面白そう。あら次の主役は団長の息子さんみたいね。息子さん団長の跡とりみたいよ楽しみね」 観覧者は誰も背けたり怖がる者はいなかった。  二部の舞台の幕が上がった。 団長が言った「さあ、お待たせいたしました。二部の始まりです」 「やっと始まったぞ!1人が警察の息子か?もう1人が確か鴨の下桜?」 観客席はざわざわと騒ぎだした。「いつもと違うわね?柱にくくりつけるなんて?参加出来るなんて嬉しいわ」 会場では拍手が響き渡った。 団長が台詞を言う「この者達は酷い極悪人だ同時に並んで1人ずつ舞台で矢を放すんだ!」 「旦那様同時にですか?」 「そうだ!とにかく列を作れ!観客席の我々の味方の諸君まず鴨の下桜に北見姫花さんのご両親から矢を放ちなさい」 北見姫花の両親は「はい」と言って鴨の下桜に矢を放った。「うっ!」 「なんだ外れたなー足かよ」北見姫花の両親はそう言った。団長は「北見さん次の人に渡してくださいその弓と矢をそうやって客席の人に参加してもらうんです。もう1人の神谷信一にもどんどん矢を放ってください。  北見姫花の両親は言った。 「復讐は私達だけで充分です。他の何も知らない人の手は借りたくありません」 「北見さんこれが一番酷い復讐なんですよ。公開処刑です。見てください矢を放つお客様の顔! 皆んな楽しそうに笑ってるこれは復讐なんです。  楽しい遊びなんですよ。復讐を楽しみましょう。ほら鴨の下桜が泣いていますよ。苦しそうですよ。なかなかいいところに矢は当たりませんね.何度も矢が当たるまで苦しませる事ができ るんです。他のお客様と一緒に楽しみましょう」 「わかりました」 矢は何度やっても足や手にしか当たらなかった。 「意外と難しいなー」 痛い〜うっ…… 私と神谷信一は苦痛に苦しんでいる。 痛い……もう……やめて…… 私も多分神谷信一も心の中で叫んでいる…… 矢が急所に当たって私達が死ぬまでこの地獄は終わらない…… 「さあ〜いいですよ〜楽しいですか?皆さん」 「楽しい」 参加者は皆んな笑いながらそう言った。  私と神谷信一の処刑はまだ続いていた。  そして観客の笑い声が響いていた。 完
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