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十三話 怪しい転校【消された】
吹雪は驚きながらもう一度に言った。「消された?」
向田真理は吹雪美代子に言った「そうなんです。真斗の特殊能力の中で一番恐ろしい能力は人間を消す能力です。もう三人の住み込みのベビーシッター兼お手伝いさんが真斗に消されてしまったんです。
警察は失踪という事で処理をしました。隠しカメラの映像を見せてもそんなの映像を加工したんだろうと言って信じてくれませんでした」
「えっ?じゃあその時の録画映像って見れますか?」吹雪が向田真理に聞くと「はい見る事はできます。見ますか?」
そう言ったので吹雪美代子は「お願いします」と向田真理に頼んだ。
向田真理は「わかりました今、準備しますね」
そう言うと向田真理は隠しカメラ映像の準備を始めた。
10分くらいすると向田真理は「吹雪先生準備ができました。これが真斗が幼稚園に入園したばかりの時、入園式の後真斗を家に連れて帰り真斗の世話を頼みました。
私は赤ちゃんの時のベビーシッターさんがいつも軽い怪我をしていた事が気になっていたので隠しカメラを真斗が寝た後あっちこっちにセットしていたんです。
この日はビデオに映っている通り私は真斗の入園式に夫の翼と私と真斗の三人で入園式に出席した後家に帰りお昼を三人で食べた後に夫と私は仕事に行く予定だったのです。
そのタイミングでお手伝いさん兼ベビーシッターさんが来てくれたんです」
隠しカメラの映像は確かに向田真理が言った通り家族三人で入園式に行った後、帰ってきて三人でお昼を食べてその後に真斗のお父さんとお母
さんが支度を始めている映像が映っていた。
そしてその後、若くて可愛い女性が真斗の家に入って来た。
「この人です。真斗が幼稚園に入園後から住み込みで私が雇ったベビーシッター兼お手伝いの人です。初めて関口さんに会った時、真斗はこのお手伝いの関口陽子さんにとても懐いていました。
ほら見てください。とても喜んで遊んでいますよね。真斗も笑顔ですよね。
この時も次の日の映像も問題ないんですよ。
ところが関口さんを雇ったちょうど一ヶ月目に事件は起きたんです。これが一ヶ月目に隠しカメラで撮った映像です。いつものように私も主人も会社に出かけました。
その後、この映像だといつものように幼稚園に送って行き関口さんはその間に洗濯掃除夕飯の下拵えをして自分のお昼も少し作って食べています。
そして真斗が幼稚園から帰ってくるお昼過ぎに関口さんは真斗を迎えに行ったようです。暫くすると帰って来ましたね。ここです。ここをよく見てください。15時家に真斗と関口さんが帰って来ましたね。その後です。よく見ていてください」
吹雪は向田真理にそう言われて隠しカメラの映像を見ていた。
その映像に映っていたのは真斗と関口さんが幼稚園に迎えに行って家に帰って来ると「真斗君
手を洗っておやつにしましょう」そう関口が言った。
「はーい今日のおやつは何?」
「私が作ったドーナツよ」「やったー」隠しカメラの映像には楽しそうな向田真斗と関口陽子が映っていた。
「まだ普通に二人が楽しそうにしている様子しか出ていませんね」
向田真理は「それじゃあ少し早送りをしましょう」
吹雪は「お願いします」そう言った。
「私は当時真斗がまだ幼稚園児だという事で仕事して帰宅する時間は17時でした。今から流す映像はその30分前です。見てください。
関口さんが夕飯の支度を始めました。真斗がキッチンに行きます「お姉ちゃんもっと遊んで〜ブロックやろうよ〜お姉ちゃん。
「真斗君。もうすぐお母さんが帰ってくるからね。お夕飯の支度しないとね。お父さんだって夜遅いけど帰ってくるんだよ。お腹空かせて帰って来るのよ。だからね〜お夕飯作っておかないと〜また明日遊ぼうか?おもちゃ片付けてくれないかな?ほらこの箱にプロック入れて」
「じゃあお姉ちゃん夕飯作ってる途中だからね」
「やだ〜やだ〜お姉ちゃんともっと遊びたい〜遊ぶ〜遊ぶ〜」
吹雪は言った「キッチンで関口さんの側に行って真斗君は随分駄々を捏ねていますね」
向田真理は言った「そうなんです。真斗はこの時自分の言う通りに動かない関口さんに苛立っていたんだと思います」
「えっ?苛立つ?まだ幼稚園児なのに?」
向田真理は吹雪に言った「そろそろこの次の場面です。よく見てください」その次の映像を見た時吹雪は驚愕した。
「お姉ちゃん僕と遊んでよ。お姉ちゃんママの代わりに遊んでくれるんじゃないの?まだママ帰ってこないんだしママからお金もらってるんでしょ?」「そうだけどね。夕飯もう少しだからママもうすぐ帰ってきちゃうから」関口陽子がそう言うと少し不貞腐れた真斗が言った「僕いつもお母
さんもお父さんも側にいてくれないから寂しいんだよ。それなのにお姉ちゃんは僕の頼み聞いてくれないんだね」
関口は真斗のその言葉を聞いて振り向いて真斗に言った。「真斗君ごめんね。もうすぐお母さん帰って来るから」真斗は「わかった。お姉ちゃんも僕の言う通りに動いてくれないんだね。僕ママもパパもあまり一緒にいてくれないから寂しかったのに。じゃあ消しちゃうね」
そう真斗が言うと真斗の目は急に青い不気味な目になっていた。そして関口陽子に言った「お姉ちゃん。消えろ消えろ消えろ消えろ」真斗が関口陽子にそう言うと関口陽子の足から身体にかけて少しずつ薄くなって完全に消えてしまった。
その後「ただいま〜真斗関口さん帰ったわよ」そう言って私は自分の家に入りました。中に入るとキッチンは料理の途中だったと言う事がわかりました。ところがどこを探しても関口さんはいま
せんでした。一人で泣いている真斗しかいませんでした。
私は「どうしていないのかしら?料理も途中
なんて」泣いている真斗を抱き上げて真斗に陽子お姉ちゃんどこに行ったの?」と聞きました。「すると真斗は「僕が消した」と言ったんです。
私はすぐこの録画映像を見ました。そして警察に言ったんです。この録画映像を見てくださいと。でも、警察の方は誰一人信じてくださる人はいませんでした」
それを聞いて吹雪は言った。この録画映像では真斗君は「お姉ちゃんも」って言ってますがもしかして関口陽子さんの前にも誰か消した事があるんですか?」向田真理は言った「実はそうなんです。真斗が消したのは私の母です」
吹雪は「えっ?お母さんを?真斗君にとってはおばあちゃんですよね?何でおばあちゃんまで?」
それは私の母が階段から落ちて手足の自由が思うようにならなくなったと聞いて何度か真斗を連れて実家に行って介護していました。
その時、真斗が言ったんです「ママ〜疲れ切った顔してるよ。大丈夫?おばあちゃんの側にいるの大変でしょう?僕がママを楽にしてあげるよ。もうおばあちゃんの家に戻らなくてもいいようにしてあげるよ。そう言ったんです。
私は何が何だかわからなくて「気持ちは嬉しいよ。でもそんな事できないよ」私はそう言いました。すると真斗は「最後におばあちゃんのベットの側で二人になりたい」そう言いました。私は二人になりたいと真斗が言った事に何の違和感も感じていませんでした。そして二人にしたんです。
暫くして真斗が病室から出てきました。
そして「私もお母さんに会っておこう」そう思って病室に入ったんです。するとそこにはお母さんの姿はなかったんです。個室だったのでどうしていなくなったのか?目撃者すらいない。
でもわかっているのは真斗が病室に入る前は母はベットで寝ていました。病院の先生方も看護師も探してくれましたがとうとう見つかりませんでした。警察に届けましたが警察は事件性がないと言って捜査を打ち切ってしまったのです。
自分でどこかに行ったのだろうと〜。でも確かに真斗が病室に入る前お母さんはいたんです。確かに〜その後真斗はわたしに「ママこれで楽になったね。ママの為におばあちゃん消しちゃった」そう言って真斗は笑っていました。
その時は病院だったし、隠しカメラもないから真斗が消したと言う証拠はありません。でも間違いなく真斗が消したんです。母と関口さんを〜」
吹雪は言葉を失った。そして更に向田真理の話は続いた「私は変な噂がたつ前にその時は隣街に引っ越しました。そして何も知らない中年女性をベビーシッター兼お手伝いさんとして雇ったんです。でも、一年後また真斗に消されました。そして私は今度は主人の会社がある品川に引っ越しました。そしてまたベビーシッター兼お手伝いさんを派遣してくれる会社に住み込みという条件で雇ったんです。
でも、その人も真斗に消されたんです。
真斗は気に入らないお手伝いさんをすぐ消してしまうんです」
吹雪は言った「それじゃあ真斗君は幼稚園を三年間のうち3回変わって引っ越しも3回したって事なんですね」
向田真理は「はい」と答えた。吹雪はまた質問した「今のお手伝いさんも何処かの会社に依頼し
たんですか?」向田真理は言った「いえ違います。篠田さんはうちの前で倒れていたので私が救急車を呼んで救急車の中に真斗と一緒に乗りました。
病院の先生の話だと篠田さんは仕事が見つからず何日も食べ物を口にしておらず水だけで過ごしていたようだと聞きました。
私は少し元気になった篠田さんと話をしてみ
たんです。そしたら保育士の資格を持っていると言うので若くはありませんが雇う事にしたんです。
うちの前で倒れるなんてこれも縁だと思いましてね。それにある程度歳がいってたほうが真斗と仲良くやってくれそうな気がするので」向田真理は吹雪にそう言った。「真斗君が小学生になったばかりの頃からずっと真斗君の面倒を篠田さんがみてくれたんですか?」向田真理は「そうです。真斗の人を消した映像や母の事を全て話しましたが働くところがないと言ってうちで長く働いてくれていますので助かっています」
吹雪は聞いた「何で篠田さんは消されなかったんでしょうか?」向田は「篠田さんは真斗の機嫌が悪くならないように真斗のいいなりですから〜私や夫も真斗が怖くて家には近づく事ができなくなりました。
真斗と距離をとるか真斗の言いなりになるかどちらかしか自分の命を守る事はできませんから」吹雪は「そうですか〜あの〜世田谷東小学校でもこの間のマラソンしていた時のような事あったんですか?」吹雪が向田に聞くと「はい、ありました。あの子は負けず嫌いです。あの子は一番じゃないと気がすまないのです。
だから一番になる為なら手段を選ばない。あの子は左右に首を揺らして笑いながら他の子が自分を抜かないように暗示をかけているんです。それは幼稚園の運動会の練習ですら同じ事をしていました。だから私はすぐに引っ越したんです」
吹雪は更に続けた「あの〜もう一つ聞いていいですか?」向田は「はい、何でしょう?」と吹雪に聞いた。すると吹雪は「あの〜もしかして東小学校の時も普通の試験の時にテスト用紙を見てクラスメイトが驚いていたとか聞いた事ありませんか?」そう言った。
その時、向田真理は吹雪にとって最も驚く言葉を口にした。
「その事ですか〜東小学校のテストの時クラスメイトがかなり驚いた顔をしていたと聞きました。
そしてクラスみんなが満点をとったと〜それが原因で学校は転校させる事に決定したんです」
吹雪は「具体的にどう言う事ですか?」
向田真理は言った。「あの子は人の顔を見るだけで心が読めるんです。ですからテスト近くになると先生の顔を見るんです。何故なら問題が先生の顔に浮き出て見えるそうです。だからその問題と答えは真斗がテストを持った瞬間クラスメイト全員のテスト用紙に映るんです。
先生には見えなかったのかもしれませんが生徒達には答案用紙に答えの緑の字が浮き出て見えた筈です。
だからクラス全員満点を取る事ができたんです。
真斗のもう一つの特殊能力それは人の心をどんなに遠く離れていても読めると言う事です。
真斗はクラスにいても遠く離れた職員室の教員の心が読めてしまうんです。
だからあの子は満点以外取った事がない。
マラソンも一位しか取った事がないんです。
だから夫も私もあの子が恐ろしくなって仕事を理由に篠田さんに任せっきりにしていたんです。
もしかしたら私も夫も消されると思うと怖くて怖くて〜あの子を避けて自分を守る事しか出来なかったんです」
吹雪は向田真理に言った「あなたは真斗君のお母さんなんですよ?自分で何とかしてください。相馬正君は亡くなったんですよ?何で殺されたのか心辺りありませんか?殺される前に小泉君と相馬君が喧嘩していたようなんですが〜」
向田は吹雪に言った「それはもしかしたら真斗が心を読める事と関係があるのかもしれません。そしてその事を知られると真斗が困るからなのかもしれない。
実際に喧嘩をしていた小泉君に聞いた方がいいかもしれません。
私達が知らない事をクラスメイトが知ってる場合がありますからね」
吹雪は「わかりました。明日生徒に聞いてみます。真斗君をこれからどうするつもりですか?何処の学校に入っても同じですよ。真斗君はまた人を殺害するかもしれないんですよ」
吹雪がそう言うと「じゃあ私達にどうしろと言
うんですか?私はこれまで一生懸命に真斗を育ててきたんですよ!!」
逆切れしたように怒る真斗の母親に吹雪はこう言った「仕事ばかりで人に任せっきりにしてあなたは真斗君に寂しい思いをさせた。寂しいから特殊能力が開花してしまったかもしれないんですよ。これは真斗君の涙なんです。これからは真斗君に声を掛けてあげてください。後は生徒に明日聞いてみます。珈琲ご馳走様でした」
吹雪はそう言って向田の家を出て行った。
続く
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