十五話 子供【病院で】

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十五話 子供【病院で】

 永峰と田所は同じ病室に隣のベットに並んでいた。二人が目を覚ますと病院の医師と南署の刑事が二人の病室の中にいた「田所刑事と永峰さんどうして老朽化したマンションの永峰さんの部屋の一室に倒れていたんですか?田所刑事何か事件でも追っていたんですか?永峰さん田所刑事と知り合いだったんですか?」 田所と永峰は言った「いえ、初めて会った人です。知り合いじゃないですよね?」 田所も「それが〜覚えてないんですよ。たぶん事件を追って永峰さんを訪ねたと思うんですが〜もしかして誰かに殴られたとか?それで二人とも倒れたとか?」 医師は言った「二人の脳も検査しましたが異常なかったんですよ。それなのに記憶がないのは不思議です」 二人は「これはどういう事なんでしょうか?」 二人が言うと刑事も医者も「わからない」と答えた。  その時、南署の刑事が言った「でも二人とも髪の毛が濡れていたんですよ。しかも塩が含まれた水を頭からかけられたような?それについて何か思い出せませんか?」 田所も永峰も言った「いえ、思い出しません。残念ですが〜」   「そうですか〜昔も〜二人のように病院に運ばれて記憶がないと言っていた人が数人いたんですよ。きっと何か事件に関係があると思うんですが〜何しろ記憶がないんじゃあ捜査になりませんからね〜。  仕方ない二人が命に別状何にもないなら捜査はしません。  田所刑事もきっと前に起きた今回みたいな事件の捜査をしていたんでしょう。  いったい何の為に人を襲うのか?襲った割には傷がついていないとはどんな犯人が起こした事件なんだか?この事件は打ち切りでいいですよね?   二人とも永峰さんもそれでいいですか?それとも田所刑事が不法侵入で訴えますか?  でもね変なんですよ。キッチンで二人はカップヌードルを食べていた形跡があるんですよ。  二人は友人か?知り合いだった可能性があるんです。  よほどの事があって記憶がないんだと私は思っているんですが〜」  永峰も言った「実は僕もそう思います。何だか何処かで会ったような気がするんです。きっと知り合いだったのかもしれません。だから訴える事はしません。倒れていたって事は僕達はきっと襲われたんですよ」   「そうですか?じゃあこれで事件の事は終わりにしましょう。今から永峰さんの会社の方が来ますから私は後ほど会社の方にお話を聞くのでこれで今日は失礼します。永峰さんのご両親は今入院中なので来れませんがね」 永峰は「わかりました」と答えた。  暫くすると永峰康太の会社の人が来て永峰に言った。  「大丈夫か?誰かに襲われたようだな?物騒な世の中だよ。ところで永峰さん会社に手帳忘れてたから持ってきたよ。お客さんのスケジュールが書いてあるとお客様を待たせるといけないから悪いけど見させてもらったよ。  君のお客様の藤井さんと駿河さんには君の部下に行ってもらったから大丈夫だよ。あとは三ヶ月先にお得意様のところに行かなければならないようだね。それまでに良くならなければこちらで対応するから安心して身体を治すんだよ。まだ検査もあるらしいからね。  それと〜君に聞きたい事があるんだけど健太郎 忍 雄也いつも通りって何の事だ?週末って?私も聞いた事がない名前だけど?他のページにはうちの会社の名前と秋山 島村 堀部って書いてある?うちにはそんな名字の人はいない筈なんだが〜空いているディスクにも秋山 島村 堀部って書いてあるんだよ。うちの会社にそんな名字の社員はいないと思うんだが〜知らないか?」  永峰は「僕も初めて聞く名前です」そう言った。 永峰と田所は津田が言った通り何も覚えていなかった。そして、永峰の両親もまた悪魔の被害者だった何故病院にいるのか?倒れていたのか?記憶がなかった。永峰の両親も康太が悪魔に関わっていた為息子の康太の記憶は既になかった。  刑事が永峰の両親はと話したのは人から聞いただけだった。両親が目を覚ました時、永峰の両親は「息子なんていません」そう答えるだろう。  そんな時、悪魔祓いをした津田絵里は車で逃げていた。そう、ゆりから逃げていたのだ。 田所を生き返らせた時に半分力を田所に渡し、いろんな人を助けてきた津田絵里にはもう強力な力は残っていなかった。  そして今、津田絵里の命は尽きようとしていた。遂にゆりに見つかってしまったのだ。  津田絵里は静かに目を閉じた。悪魔のゆりが動かしたトラックが津田絵里の車を目掛けて突進してきたからだ。  津田絵里はこの事故で命をなくしたのだ。65歳だった。  津田絵里の事は誰も知らなかった。何処に住んでいるのかも天涯孤独で事故に遭って亡くなったとして処理された。  永峰と田所は同じ病室で話していた「この近くで事故が起きたらしいですねー大事故だったらしいですよー」 「そうなんですかー?」 「トラックが走っている自家用車に突っ込んできたらしいですよー。さっきニュースでやっていましたよ。天涯孤独の女性らしいですよー。持ち物から名刺が出てきて津田絵里さんって名前らしいので情報を呼びかけてるって。南署からも連絡が来ましたよ。知っていますか?」 永峰は言った「さあ?知りません。トラックが突っ込んで来るなんて災難でしたね。その女性は」 田所も言った「そうですね。天涯孤独だったらしいし、お気の毒に」 二人には津田絵里の記憶は少しも残っていなかった。  自分達が津田絵里に助けられた事も全て 忘れていた。 完
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