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十六話 こけし【祭り】
「サンデー特集です。三ヶ月前に特集で紹介しました。この秋田県のこけし通りにあるこけし祭りが今日と明日の二日間開催いたします。お客さんが次々と入場してますねー。これですね。この袋いっぱいのお菓子とこのこけしのこけ子ちゃんのこけしを配ってます。このお菓子とこけ子ちゃんは男女問わず小学校二年生まで限定でお祭りに来るお客様に配られます。このお菓子三ヶ月前も言いましたが量多くないですか?無くなり次第終わりになりますのでテレビで見てる視聴者の皆さんご家族で是非お越しください。いい匂いがしてますね〜町長の小池さんこれはもしかしてきりたんぽですか?」
「そうなんです。まだ他にも燻りがっこやハタハタ、秋田野菜の鍋など沢山屋台で売っていますので是非お越しください」
「そうなんですねー。では、きりたんぽをいただいてよろしいですか?」
「はい、どうぞどうぞ」
「美味しい。これはかなり美味しいです。
周りを見てください。だいぶお客様が来てますね。お子さんにインタビューしてみます」
「お名前は?」
「結城すみれです」
「何歳ですか?5歳です」
「沢山のお菓子と可愛いこけし貰えてよかったですね」
「うん」
「お母様今日は家族でどちらからいらしたんですか?」
「東京からなんです。三ヶ月前にテレビを見まして昨日から秋田に泊まってるんです。大きなお祭りと聞いて行ってみたくなりまして」
「そうですか〜楽しんでください。ありがとうございました」
「次のご家族にもお話を聞いてみましょうお名前は?」
「小林智です」
「小学生かな?」
「はい、小学校一年生です」
「そう〜智君はどこから来たのかな?」
「東京から来ました」
「そうですか〜ありがとうございました。楽しんでください」
「大きなお祭りの開催ですので東京から来てる人が多いいようですねー。みんな楽しんでください。
じゃあまた後ほどインタビューをします。一旦スタジオにお返しいたします」
「きりたんぽ美味しそうですねー」
「燻りがっこって食べた事ないんですよ」
「私も食べた事ないんです」
「今、お酒も売っていたのが見えましたね」
「銘酒ですかねー。行ってみたいですねー」
こけし祭りはテレビとサイトや新聞で取り上げられたせいか交通の便が不便なところで開催するにも関わらず沢山の人で賑わってた。
「久美子凄い人だね」
「本当ねーこんな田舎町にこれだけの人が集まる
なんて思わなかったわ」
「久美子本当に昔のようにこけし通りには沢山のこけし職人がこけしを売ってるのね。可愛いね〜これじゃない?こけ子ちゃん。おばさんこれください」
「はいよ。500円ね。可愛いだろう大切にするんだよ」
「はい」
「美智子早速この町のマスコットキャラクターのこけ子ちゃん買ったんだね」
「久美子は買わないの?」
「私は見慣れてるからね。これで本当に若い人がこの町に住み着いてくれるのかしら〜ここは交通の便が不便だから車が無いと生活できないんだよ」
「久美子がそんなんでどうするの?ほら久美子のお母さんがあそこで燻りがっこを売ってるわよ。私挨拶したいから行こう」
「待ってよ〜美智子〜」
「久美子のお母さん久美子の友達の美智子です。燻りがっこくださいあとオレンジジュース」
「まあまあ美智子ちゃん。わざわざこんな田舎町までありがとうね。はい燻りがっこと飲み物で800円になります」
「ありがとう。おばさん久美子も何か食べ物買ってあそこのイートインスペースで食べようよ」
「わかった。じゃあ私は酒饅頭買って来るからイートインスペースで座って私の席も取っておいてね」
久美子は酒饅頭とオレンジジュースを買って高校のクラスメイトの目黒美智子とお喋りをしながら携帯で写真を撮っていた。
「久美子、久美子あれってサンデー特集のインタビューじゃない?あのアナウンサーってさー今人気がある櫻井鈴鹿じゃない?凄い凄い」
「まあねー。100年以上前に開催していたお祭りを
再現してるんだからメディアでも使って東京から若い人に来てもらって町の活性化に繋げないと
この町は年寄りだらけで死んでしまうからねー。ここは水も空気もとても澄んでいるし自然が沢山あるし温泉だってあるのに。このままだと昔から行ってた温泉も潰れてしまうからねー。何とか町が生き返るといいんだけどねー」
「そうだよねー。こけしもこんなに可愛いのにこけ子ちゃんが無くなるのは悲しいね」
「美智子ほら〜来た来たこけ子ちゃんのキャラクターが」「本当〜誰があの着ぐるみの中に入ってるの?」「それがさ〜町長の小池さんだって」
「町長ってそんな事もするの?」
「町の活性化の為だからね。この町の住人は皆んな必死だよ」
「そうなんだー活性化に繋がるといいね」
「明日は男の人だけでお神輿担ぐんだよ。その神輿も数年前に町会神輿祭りの時に見たのが最後だよ」
「そうなの?じゃあ久美子のお父さんも担ぐの?私久美子のお父さん見た事ないんだけど?」
「父は仕事が忙しくてお神輿どころじゃないって」
「そうなんだー。挨拶したかったけどなー」
「明日もやるんだよね?今日久美子のところに泊めてくれない?明日も見たいんだよね〜。ちょっと家遠いからさー」
「わかったいいよ。家の母は誰かが泊まってくれると喜ぶの。料理を振る舞えるってね」
「本当ね?嬉しい。実はそのつもりで着替え持ってきちゃった」
「相変わらず、ちゃっかりしてるねー美智子は」
久美子はこの時、お祭りが賑わってる様子を見てほっとしていた。
お母さんも笑顔で燻りがっこを売ってるし向井さんも元気そうだし、きっとこのお祭りの準備で意見が合わなかったとか小さなトラブルでも起きたんだろう。
今は町の人達と仲良くやってるみたいだしお母さんも元気になったみたい。
この時、久美子はほっとしていた。
「じゃあまた屋台をまわってみようか〜。久美子の酒饅頭美味しそう。私も買ってくる」
「じゃあ待ってるね」
それにしても町のみんなは生き生きしてるなー。
お母さんが元気がなかった時があったなんて嘘みたいだわ。
その時、お酒を売ってた向井さんと町長さんが口論しているのを久美子は目撃した。
「どうしたんだろう?」近くにいた久美子は向井の「実行しなければ駄目ですか?」という声が聞こえてきた。
「町の活性化の為です。年寄りだらけになったらどうするんですか?」
「でも〜」
「これしか方法はないんですよ。これ以上高齢者だけになってしまうときのこを取って売る事もこけしを作る職人さんさえいなくなってしまうんですよ。生活ができなくなるんですよ」
「そうですね。わかりました」
久美子はやっぱり何かあるのか?と心配だったが
その日のお祭りは好評でどの屋台も品切れになっていた。
久美子の家に美智子は泊まり母親の圭子は美智子に料理を振る舞いお喋りをしながら楽しい夕飯のひと時だった。
久美子と美智子が少し気になったのは、たまに見せる母圭子の悲しそうな表情だった。
続く
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