十六話 こけし【行方不明】

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十六話 こけし【行方不明】

 毎日ススキの町には警察が捜査に来ていた。そして、こけし通り付近に建っている家に行き一軒一軒聞き込みをした。  勿論井上家も例外ではなかった。  「井上圭子さん。圭子さんもこけし祭りの準備を手伝っていたんですよね?何でお菓子を貰った子供達だけが行方不明になったのか?ご存知ないですか?子供達のご両親が気の毒でならないんですよ。圭子さんも娘さんがいるからわかりますよね?そういう親の気持ちが〜でもねここの地元の人は皆んな言うんですよ。知らないって。でもおかしいと思いませんか?本当は知ってるんですよね?教えてくれませんか?」 圭子は言った「知りません。私も探してみます」 あまりにもはっきり言う圭子に警察の宮部一郎と藤宮達郎は「そうですか〜お菓子を貰った子供だけなんですよ。いなくなったのは〜こけし祭りってもしかしたら?子供を消すお祭りだったんじゃないんですか?それがどう町の活性化に繋がるのか分かりませんが?誰かがどこかに子供を隠しているんじゃないんですか?犯人を隠蔽すると圭子さんも犯罪者に加担した事になるんですよ」 圭子は言った「それならこの町を隅から隅まで調べてください。こんな小さな町隠す場所何てありませんよ」 警察の宮部と藤宮は「また来ます」そう言って井上家のドアを閉めた。  井上家を後にすると宮部と藤宮は言った「あの様子だと子供達はススキの町にはいない。もっと遠くに短時間で隠したんだ。きっとそういう仕事のプロの誰かを大勢雇って」 「何の為に?ススキの町の人達は町を活性化するお祭りだと言っていた筈?お祭りと子供達の行方不明と何か関係があるのか?わからないな〜今回の事件の真相が見えてこない。子供を消して何をするのか?何かしたら活性化どころじゃなくなる かえって悪い噂がたって誰もススキの町に住みたいとは思わなくなるだろうに?」 「それに行方不明の子供の家には貰ったお菓子はなかったけど貰ったこけしだけはどの家にも置いてあった。何故?犯人はこけしを持っていかなかったんだろう?あのこけしに何か発信機みたいなものがあるのか?と思っていたけど何もなかったしな〜犯人に繋がる指紋もなかった。付いていた指紋はこけしを貰った子供の指紋だけ。今回の事件は全くわからないよ。長引きそうだよ」 「そうですね。でもここには子供達はいないとわかった。全国的に捜査して子供達を探そう。子供達のご両親が気の毒だよ」 「はい宮部さん何としても子供達を探しだしましょう」 「藤宮さんそれに一つ気になった事があるんだ何で子供達は両親に気づかれる事なく連れ去られたんだろう?」 「そうですね。実は僕もそこが不思議だと思っていたんですよ」 「とにかく署に戻ってもう一度原点に戻って考えてみよう」 宮部と藤宮の二人は急いで署に戻った。 二人は大勢の子供達がいなくなったのだから必ず何処かで子供達は早い段階で見つかるものだと思っていた。そして犯人も必ず見つかると思っていた。 ところが警察の考えとは違い捜査は難航していた。 こけし祭りでお菓子を貰った子供達が見つかるのはこの日から20年も経った時だった。 続く
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