十六話 こけし【20年後】

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十六話 こけし【20年後】

 「あれから何も手掛かりが掴めない犯人の痕跡すら見つからない。いったい子供達は何処に行ってしまったのか?署も諦めているようだしあれから20年も経っているのに見つからないって事は子供達はもしかしたら?署からは個人的に捜査するように言われてしまったよ。僕はね藤宮さん子供達のご両親の為に諦めたくないんだよ。子供達って言ってももう大人だ。ご両親は今でも子供達が置いて行ったこけしを握り絞めて泣いているよ。気の毒で見てられない」  「私も宮部さん同じ気持ちです。あれから全国的に探しました。ご両親の姿が偲びなくて何としても探し出したいんです」   「20年経ちましたが不思議な事が分かりましたね。私達はお菓子を貰った子供が全員行方不明になっているものだと思って捜査しましたがお菓子を貰った五歳以下の子供は行方不明にならなかったんですよね?どうして何でしょう?」   「藤宮さん僕はたぶん五歳以下の子供は行方不明にならなかったのは僕にも子供がいるからわかるんだ。五歳くらいになると言葉が大抵の子供ははっきりと話す。住所も名前もね。だけど五歳以下の子供は個人差があるけどまだそこまではっきりとは話す事は出来ない。つまり犯人にとって話せる事が条件だったんだよ」 「それじゃあ宮部さん」 「そうだよ。藤宮さん子供達は生きている。そして犯人に何かさせられているんだ。そして何処かに監禁されている。言葉をしっかりと話せるかどうかはお菓子を配って話しかけた時にわかるからね」   「でも、宮部さんお菓子を配ったススキの町の人達やお祭りの準備をした人皆さんを調べましたよね?でも手掛かりがなかった」 「そうなんだよねー。あんなに大勢何処に監禁されているのか?」 その時宮部の携帯が鳴った。 「なんだって?本当ですか?あの時の子供達が20年経って一人で家に戻ってきた?どういう事ですか?いったい今まで何処に?はい、そうですか?今から東京総合病院に行くんですね。そうですね。本当にご両親の子供かどうか鑑定と健康状態を診察しないといけませんね。それからですね事件の真相が分かるのは〜」 「宮部さんその事なんだがね〜自分の家に戻って来た子供達の様子が少し変なんだよ」 「えっ?変ってどんなふうに?」 「当時幼かった子供達は皆んな同じ事を言うんだよ。とても心地いいところで勉強も運動もテレビもお菓子もご飯も食べさせてくれて楽しかった。私達は自由に過ごしていたんです。それにいい人ばかりでたくさん友達ができたと言っているんです。監禁なんてされてないって。そして、ススキの町のこけし祭りがとても楽しかったからススキの町に住みたいって言ってるんです」 「えっ?ススキの町にですか?」 「そうなんだよ。やはりススキの町のお祭りに関係があるような気がするんだ」 「そうですね。僕も藤宮さんと今病院に向かいます。そして家に帰って来た時のことをご両親に聞いて犯人を割り出したいと思います」 「宮部さん犯人を割り出すのは難しそうです。何しろ皆んな自分達が誘拐されたとは思っていな いんだから。それに何故か?自分のご両親が楽園に自分達を預けたと思い込んでいるんだからね。  それに子供達の世話をしていた人は日本語が喋れる外国人らしいんだ。そればかりかここで健康診断を受けてるあの時お菓子を貰った子供達全員言うんだよ。ススキの町で働きたいとも言って るんだよ」  「えっ?外国人?」 「そうだよ。子供達は外国で生活していたんだよ」 「えっ?外国とにかく病院に行きます詳しく聞かせてください」 宮部はそう言うと署長からの電話を切り藤宮と一緒に東京総合病院に向かった。 続く  
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