十六話 こけし【小さな手】

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十六話 こけし【小さな手】

 藤宮と宮部はこけし祭りでお菓子をもらって行方不明になった子供が住んでいた家に急いだ。  行方不明の子供達の両親は「子供が誰に誘拐されて何処にいたのか少しでも分かれば」そう言って快くこけしを貸してくれた。  藤宮と宮部は東京で5、6歳の子供とその両親に捜査協力を依頼した。  こけし祭りの近くで5、6歳の子供と親に捜査協力を頼んでも協力してくれないと宮部と藤宮は思っていたからだ。  仮に協力したとしても本当の事は誰も言わないと思っていた。  何故ならススキの町の住民は誰一人口を継ぐんで知らないとしか言わないからだ。  藤宮と宮部に捜査を協力をしてくれたのは東京に住んでいる糸井田陸君5歳と松田由美6歳河野鳥夢5歳と立花潤二とその両親だった。  藤宮と宮部は四人の家にこけしを持って行った。そして藤宮と宮部以外の捜査員が格家に向った。  格家で宮部と藤宮以外の警察官は、あの時と同じ状況を行方不明だった子供達の両親に聞きながらつくった。  家族が寝静まる午後22時一階の窓ぎわで電気を消してこけしを子供達に握らせた。  四人はその時、こけしを見て驚いた。 宮部は自分を含めた捜査員四人に携帯で言った。  「何故5歳以上の子どもが監禁されて5歳以下の子供が監禁されなかったかわかったよ。  こけしに緑色で浮き出たこの文字を3歳や2歳の子供は読めなかったんだよ。  犯人は喋れるのが条件で誘拐したんじゃない。  文字が読めるか読めないか?で判断したんだ。   そしてそのこけしに浮き出た文字を見て子供達が窓を開けて自分で来るように仕向けたんだ」   「そうですね。宮部さんこの文字は大人が触っても何も反応しない。  子供が触ると子供の体温で文字が出るように開発されていたんだよ。  きっとこの文字のインクが特殊なんだよ。そして、時間が経つと消える仕組みになっているんだ」 「何て巧妙な手口なんだ」  暗い部屋で子供の手の体温でこけしのこけ子ちゃんの身体を子供が握るとこけしのこけ子ちゃんに浮き出た文字は緑色で「窓を開けて外に出て花火が見えるから」たったそれだけだった。  「いろいろ余計な事を書くと子供達は怪しいと思って両親を起こす筈〜でも花火だけなら早く見たいと思って窓を開けてしまうんだよ。そんな子供の心を犯人は利用したんだよ」   「宮部さんじゃあ犯人って100年以上前に人気だと言ってたお祭りのノートを持っている人物小池さん」 宮部は言った「いや違う。これはススキの町全員が関わった犯罪だよ。でもノートがないし、証拠もない。このこけしだけじゃあ状況証拠だけだから証拠に入らない。  「何処かに証拠があれば」  「宮部さん外国にそっくりな日本って?そこが分かれば犯人の証拠が分かるかもしれませんね」  「そうだね。藤宮さん日本には外国にそっくりな場所がいくつかあるそうだよ。  僕はこの秋田の近くで子供達〜嫌、今は大人だがね。日焼け具合いからきっと海の近くだと思うんだ。  本当に隠したいものは近くに隠すって言うしね。  ススキの町の住民は自分達が仲間外れにならないように誰一人裏切る人はいない。  つまりススキの町の近くに隠したとしても私達が来ると住民の連携プレーですぐ子供を隠したんだろう。  だから今まで見つからなかったんだよ。  それに子供達は20年も誘拐犯と過ごしたんだ。自由にのびのびと過ごしていたとすれば子供達にとっては父親とか母親の存在になる筈だよ。  だから子供達は自分を育ててくれた両親のような存在の犯人の事を誰も悪く言わない。むしろ尊敬しているんだよ」   「尊敬?宮部さん一刻も早く子供達が監禁されていた場所を特定しましょう」   「藤宮君そろそろ〜ススキの町の住民達の中で数人は良心の呵責に苦しむ人間が出てくると思うんだ。意味わかるね?ススキの町でお祭りの準備をしていた住民を遠くから監視するんだよ。 きっと良心の呵責に苦しむ人は必ず監禁場所に来る筈だから」 「はい、じゃあ監視するように声を掛けましょう」 「そうだね。そうしよう」 その時、宮部の携帯が鳴った。 「はい、宮部ですが〜そうですか〜じゃあ子供達は誘拐された時から戻ってくるまで相当大切にされていたって事ですね。藤宮さんにも伝えておきます」 「どうしたんですか?宮部さん」 宮部は言った。 「今、署から電話があって誘拐された子供達に学力テストを全員受けさせたそうだよ。そしたら小学校中学校までの学力テストは満点で皆んな文字が達筆だとの事だよ。  たぶん大学卒業レベルくらいの実力はあるんじゃないのか?と署長から言われたよ」 藤宮は「犯人の目的は〜やはりススキの町を活性化する事〜」 宮部は黙って頷いた。 続く
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