十六話 こけし【高齢者】

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十六話 こけし【高齢者】

 宮部と藤宮の二人は物陰からこっそり井上くにを見張っていた。神輿の数はススキの町の小さい町とは思えないほど大きくて立派な神輿が三台子供神輿が一台あった。それを一台ずつ井上くには丁寧に箒で履いてから濡れた雑巾で綺麗に拭いていた。そして30分くらいすると人気アナウンサーの櫻井鈴鹿が「それじゃあ井上さんまた何かあったらお願いします。私がまだ新人だった時も本当に助かりました。今、私があるのもススキの町の皆さんと井上さんのお陰です。では私はこれで」 「はい、さようなら」 井上くには櫻井鈴鹿を見送ると急いで一番奥の大きな神輿の所へ急いだ。「さあて、後はこれをススキの町の町会室に戻しておこうかね」    「宮部さんあれは?」 「あれはたぶん100年以上前に好評だったというお祭りのやり方が書いてあるノートだ。とにかく井上くにに事情を聞きに行こう」 藤宮と宮部の二人は井上くにに声を掛けた。 「井上くにさんあなただったんですね?こけし祭りを提案したのは?小池さんにそのノートを一番初めに見せてススキの町を活性化しようと小池さんに言ったんですね。井上くにさんあなたがこのお祭りのリーダーだったんですね?違いますか?」 井上くには言った「そうです。こけし祭りを考えたのはだいぶ前に亡くなった私の母です。ススキの町を活性化するにはそれしかなかった。このノートを処分してもいつかまた誰かがこけし祭りの事を必ずノートに書いて何処かに隠す筈です。そうしてこの町は廃れては生き返るその繰り返しで町は続いていくんです。こけし職人や、きのこを売って生計を立ててる住民を私は殺す事ができない」 宮部は言った「何も関係ない子供達を使ってでもですか?」 井上は言った「私達はあの子達を自然豊かなところで勉強もスポーツも美味しい食事も人を雇って教えた。その結果あの子達はススキの町で働きたいと自ら言い出したんだ。子供達の意思を尊敬したらどうかね」 宮部は言った「尊重?あなた達は尊重したんじゃない。洗脳させたんだよ!違いますか?子供達を一体何処に連れて行って監禁したんだ?サンデー特集とグルなのか?」 井上くには言った「グル?人聞きの悪い。私達は初めから協力者でしたよ。私がまだ若い頃からね 櫻井鈴鹿は私の後輩ですからね」 「井上さんの後輩?じゃああなたもアナウンサーだったんですか?」 井上は言った「そうだよ」 藤宮も聞いた「じゃあ子供達をどうやって家から自分で出てくるように仕向けて何処に連れて行ったんだ?警察で話を聞く。そして櫻井鈴鹿にも事情聴取をとる事にしよう。息子さんの奥さんの圭子さんもこの事件に関わってるんですか?」 「圭子さんは私を止めたよ。こけし祭りのノートの内容を知った時からね。だから圭子さんは関係ないんだ。あの子は関係ない」 井上くにはそう言った。 宮部と藤宮は井上くにを秋田県警に連れて行った。  続く
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